第12回
カネカネカネのケーエイ学4: 企画というビジネス。

デザインを紙上に表現して、印刷物として納品するのは、
われわれにとってもっとも安全なビジネスだ。
ときに、完成品ではなく、企画とかアイディアそのものを
売らねばならないような場合もある。
このビジネスは、わが社でもまだ、方法論が確立しているとはいえない。

このビジネスは、渡してしまえばそれでおしまい。
押さえておける担保がないところがヨワイ。
相手にとっては、聞いてみないとその価値は判断できないのだが、
われわれとしてみれば、提案した段階で費用のほとんどが発生済みである。

また忘れがちな真理だが、アイディアは有限である。
些末なアイディアならいくつも出てくるだろうが、画期的なもの、
本質的なアイディアとなると、多くの場合ひとつである。
そのひとつのアイディアを、どのように確実にお金に換えていくか、
よくよくの戦略が必要だ。

役所では、「企画料」という名目では費用を請求できないそうだ。
「調査費」といえば認めてもらえるというのである。
つまり役所の論理では、企画というのは「思いつき」にすぎない。
調査ならば、必要性もわかるし人手も時間もかかるだろう、
ということなのである。
「思いつき」が軽視されるのに、
どういう文化的背景があるのかわからない。

たとえ3分で思いついたものだとしても、
アイディアなしに事業は成り立たない。
多くの事業は、そのアイディアが本質的なものかどうかにかかっている。
むしろ調査などは、してもしなくても事業の成否にはあんまり関係ない、
と思うがいかがだろうか。

われわれも、企画が軽んぜられないように、注意はしている。
一つは心理的なもので、
これはプレゼンテーションの技術による部分が大きい。
アイディアは小出しにすると、
相手は自分で考えたかのように勘違いしてしまうので、
できるだけ全体を完成させてからいっぺんに見せる。

もう一つは、あらかじめ知的財産権を保全しておくことだ。
この方法は、ビジネスとして成立するかしないかわからない段階で、
費用がかかりすぎるのが弱点だ。


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