第89回
借主の方から未払賃料を
敷金や保証金から引いてもらうことはできません。

先週の宿題は 
事務所の貸主に敷金を預けています。
売上がなく賃料を支払えない場合、
借主は今月支払分の賃料を
敷金から引いてもらうことができる。
○でしょうか? ×でしょうか?

という問題でした。
みなさんはどう考えたでしょうか?

答えは×です。
貸主は、敷金・保証金を借主が
賃料を支払わないときなどのために
担保として預っていると説明しました。
だから、借主に事情があって賃料を支払えない場合には、
敷金・保証金から引いてもらってもよさそうです。

しかし、敷金・保証金は貸主のための担保ですから、
敷金・保証金から未払賃料分を差し引くかどうかは、
貸主が決定権を持っています。
だから、法律上は、借主から未払賃料分を
敷金・保証金から引くことを請求することはできません。

敷金・保証金は貸主にとって、未払賃料だけでなく、
契約が終了して明け渡しが済むまでの
原状回復費も担保するものです。
契約の途中で、未払賃料が発生して、
その都度、敷金・保証金から未払賃料を引いてしまうと、
貸主にとって担保が減ってしまうことにもなってしまいます。
だから、借主が「今月の賃料は苦しいので敷金・
保証金から引いておいて」と貸主に頼んだとしても、
よほど人がいい貸主でもない限り、応じてはくれないでしょう。

これに対して、契約が終了して、
事務所の明け渡しまで済んだ場合には、
借主から貸主に敷金・保証金の返還を
求めることができるので、
未払賃料などを敷金・保証金から
差し引くよう求めることができます。
この差し引くことを相殺(そうさい)と言います。 


←前回記事へ

2003年1月13日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ