第110回
不動産屋さんが仲介手数料の他に貸主からも広告料名目で
1ヶ月分を受け取っているのは建設省告示の影響です。

不動産屋さんの仲介手数料については
みなさんから質問などが多いので、
今回も取り上げます。

第100回の連載で、
福岡では仲介手数料を広告料名目で
貸主からも1ヶ月分取っている
不動産屋さんがあるお話しを紹介し、
それは宅建業法違反(46条)になるという説明をしました。
貸主から広告費名目で仲介手数料を取っているのは
福岡のその不動産屋さんだけではないようです。
これには、原因があります。

建設省(現国土交通省)が、
「依頼者の依頼によって行なう広告の料金」は
仲介手数料とは別にもらってもよい
という告示を出しているのです
(昭和45年建設省告示第1552号)。
だから、広告料金は仲介手数料ではないし、
仲介手数料と別に受け取ることは
役所も認めているという理由で、
借主から仲介手数料として1ヶ月分を受け取り、
貸主からは広告料名目で1ヶ月分を受け取っているのでしょう。

しかし、この広告料金については、
裁判で争いになり、
裁判所は「大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲では
まかなうことが相当でない多額の費用を要する
特別の広告料金を意味する」
と判断しています(東京高裁昭和57年9月28日判決)。
したがって、貸主が特別に新聞などに
広告を出すことを依頼したような場合で
仲介手数料ではとてもまかなえないようなケースでのみ、
不動産屋さんは広告料を仲介手数料とは別に
受け取れるわけです。

一般に借主から仲介手数料として1ヶ月、
貸主から広告料として1ヶ月受け取るというケースでは、
特別に出した広告の実費手数料ではなく、
成功報酬として受け取ったと判断できますから、
宅建業法違反なのです。

不動産屋さんにも、
1ヶ月分の賃料では経済的に合わない場合があるなど
言い分はあるでしょうが、
そうであるならば、業界で団結して、
国土交通省に対し宅建業法を改正して
報酬を自由化するよう交渉するほかないと考えます。


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2003年2月11日(火)

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