第118回
値段が安い弁護士がいい弁護士とは限りません。

毎週金曜日は「弁護士の話」です。
今回から「弁護士の選び方」についてお話します。

何週かにわたり、弁護士費用についてお話してきました。
弁護士会報酬規程という基準がありますが、
そこから減額する場合があるという話もしました。
さて、そこで、弁護士費用を減額してくれる弁護士が
いい弁護士か?という話をします。

値段を安くする場合、
本当に善意で安くしてくれる弁護士もいますし、
この事件ではこの程度の活動しかしないから
安くするという場合もあるのです。

僕の経験した例で説明します。
弁護士会報酬規程通りに請求すると、
弁護士費用が着手金だけで
100万円くらいになる遺産分割の事件がありました。
亡くなったお父さんが土地を長男名義にしており、
他の兄弟がそれは不平等だから、
自分の取り分を戻せと2000万円くらい請求してきたわけです。
これを前の弁護士は着手金を30万円で受けたそうです。

それだけ見ると、いい弁護士なのですが、
依頼者は、自分の言い分について何も主張や立証をしてくれず、
最終的には自分名義の土地を売却して
分けるしかないと言われたそうです。
そこで、その依頼者は僕の著作を見て、
前の弁護士はやめて僕に依頼してきたのです。

事案を聞いて、僕は、前の弁護士は、
この事案は依頼者の方が法律上負けだと判断したため、
相手の言い分はそのまま認めて、
あとは相手に支払う金額を、任意に支払うことと引き換えに
減額してもらう方針だったと思いました。
前の弁護士は、弁護士としてやることが少ないと判断したので、
着手金を安くしたわけです。

でも、僕は依頼者の意向に沿う法律上の理屈を知っていたので、
僕にとっては、さらに判例を調査し、依頼者の主張する事情も聞き、
その裏づけとなる証拠も整理し、それを書面として作成し、
相手方と裁判所を説得しなければならない
労力のかかる事件だったのです。
だから、僕としてはやることが多い
とても30万円では引き受けられない事案でした。
他にも弁護士費用は安いかもしれないけど、何もしてない
そういうケースに出会うことがあります。
だから、弁護士費用が安いからと言って、
いい弁護士とは限らないのです。


■今週の宿題■
普通の建物賃貸借契約で、
契約書に3年に1度賃料の値上げができると
増額のことしか書いていない契約でも、
賃料の減額を求めることができる。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


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2003年2月21日(金)

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