第222回
名義を変えられる前に押さえるのが仮差押です。

第219回から、
相手方が財産の名義を変えてしまったなどの場合も、
取り戻したりすることができるという話をしてきました。
しかし、一度財産の名義を変えられてしまうと、
取り戻すにも裁判をしなければならず、
こちらの知らない相手方の財政状況や
相手方と名義人の関係などが
裁判上の争点となったりするので、
請求する側からの立証は難しいです。
普通の裁判と比べて費用・労力がかかる上に、
敗訴してしまう場合もあります。
そこで、債権者の側から考えて、安全な方法は、
名義を変えられる前に押さえてしまうということです。

自宅などの不動産であれば、
差押えをしてしまえば
第三者の名義に変えることはできませんし、
売掛金や預金などを差し押さえてしまえば、
相手方は売掛金を回収したり、
預金を下ろしたりすることはできなくなります。
しかし、差押えは、以前説明したとおり、
判決か公正証書がなければできません。

裁判をしていたら間に合わない、
そういう場合に財産を確保しておく方法が仮差押です。
仮差押は、判決が出るまで待っていると、
名義を変えられてしまったり、
売掛金の回収をされたりしてしまうという場合に、
仮に押さえておく制度です。

仮差押は、裁判が終わる前に
相手方の財産を押さえられる便利な制度ですが、
裁判で勝つ見込みがあるという証拠を
提出しなければなりません。

代金の請求で言えば、いつも僕が言っている
相手方の署名捺印のある発注書や
契約書がその証拠となります。
だから、相手方の署名捺印のある発注書や
契約書がなければ仮差押は利用できないと思ってください。
また、仮差押をするには、
債権額の2割を担保としてつむ必要があります。

仮差押は、裁判をする前に、
相手方の財産を押さえてしまう制度ですが、
後でする裁判で請求が認められないこともあります。

こういう場合、仮差押をされた方は、
損害を受けることになります。
そのことを考えて、仮差押する場合には、
債権額の2割くらいを担保として積むこととなります。
この担保は、後で裁判に勝てば戻ってくるお金です。

仮差押は、便利な制度ですが、
証拠と担保となるお金が必要になります。


■今週の宿題 ■
債務者の財産を差し押さえした場合、
最初に差し押さえた人が
他の人に優先して弁済(返済)を受けることができる。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


←前回記事へ

2003年7月25日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ