第230回
時効にかからない対策があります。

昨日、製造業、卸売業、小売業などの代金債権は
2年で時効にかかり、
運送業やホテル業などは、
1年で時効にかかってしまうという説明をしました。

短期時効にかからなくても、
会社の取引上発生した債権は5年で時効にかかります
では、時効期間が経過してしまうと、常に時効によって、
代金債権は消滅してしまい請求できなくなるのかと言えば、
そうではありません。

時効を止める方法があります。
これを時効の中断と言います。
時効が中断すると、そのときからまた
時効を計算することとなります。

時効の中断の方法として、一番費用がかからないのは、
相手方が、支払義務のあることを認めた文書に
署名捺印することです。
あるいは、代金の一部を支払ったことも、
時効を中断したことになります。
これらは、法律用語で「債務の承認」と言っています(民法174条)。

時効の中断方法として、
民法には「請求」というものが記載されているせいか、
請求書を出しておけば
時効が中断されると思っている人が結構います。
しかし、これは間違いで、
法律は、「裁判上の請求」
時効の中断方法として挙げているのであって、
請求書の送付では時効を中断しません。
だから、相手が債務の確認書も出さないし、
一部の支払いもしないという場合には、
訴訟を起こさないと時効は中断せず、
時効にかかってしまいます。

同様の誤解で、内容証明郵便による請求があります。
内容証明郵便は時効を中断する方法として
認められているのですが、
それは6ヶ月以内に訴訟を起こした場合の話です。
内容証明郵便によって相手方に請求した後、
訴訟を起こさないでいると、
時効は中断せずに進行してしまいます。

時効を止めるには、
相手方に代金の確認書を書いてもらうか、
代金の一部の支払いを受けるか、
訴訟を起こすしかないと覚えておいてください。
当事者間で「払え」「払わない」などと交渉している間も
時効は進んでしまいます。

相談を受けて、「それは時効にかかっています」
ということはよくあります。
特に短期消滅時効は、
弁護士でもうっかりしている場合があるので要注意です。


■今週の宿題 ■
Aさんには、子供Xさん、Yさん、Zさんがいました。
ZさんがAさんの面倒を見ていたので、Zさんを受取人とする。
1000万円の生命保険をかけていました。
Aさんの残した財産はこの生命保険のみで
他に財産はありませんでした。
Aさんが亡くなった場合Zさんは
この1000万円を3等分しなければならない。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


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2003年8月6日(水)

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