第231回
物を預かる商売は担保を取っているのと同じです。

売買契約を結んで、
代金をもらえなければ
商品を引き渡さないことは当たり前です。
では、関連した物はどうでしょうか?
引き渡さないことができるでしょうか?
というのが今日の説明です。

例えば、運送業X社がY社から商品A、
商品Bの運送を委託されました。
商品Aを目的地まで運びましたが、
商品Bの運送はこれからだという場合に、
商品Aの運送料を支払ってもらえなければ、
X社は商品Bを引き渡さないと言えるのかという問題です。

X社は、商品Aの運送料をもらえるまで
商品Bを引き渡さないと言えます。
同様に、倉庫などで預かっている商品があった場合に、
倉庫料を支払わない場合には、
倉庫の中の商品を引き渡さないと言えます。
この代金を支払ってもらえない場合に、
預かった物を引き渡さないと言える権利を
留置権と言います。

企業は、継続して物を売って、
収入を得なければ営業を継続していけません。
ところが、留置権を行使されてしまうと、
取引がストップしてしまい、
収入も途絶えてしまいます。

したがって、
倉庫業者や運送業者に商品を預けている場合には、
事業を継続するためにも、
財務状況が苦しくても、
留置権を行使されないように、
優先的に代金を支払わなければならないわけです。
即ち、相手方から商品を預かる商売は、
相手方から担保を取っているのと同じなのです。

最近、民事再生手続きにより
会社の再建を図る会社が増えています。
民事再生手続きでは普通の債権者の債権は
80%から90%はカットされてしまいます。
しかし、会社の再建を図るには、
預けている商品を売っていかなければなりません。

そこで、民事再生手続の申立をされても、
留置権を主張できれば通常の債権者より
優先的に未払代金を支払ってもらえることとなります。


■今週の宿題 ■
Aさんには、子供Xさん、Yさん、Zさんがいました。
ZさんがAさんの面倒を見ていたので、Zさんを受取人とする
1000万円の生命保険をかけていました。
Aさんの残した財産はこの生命保険のみで
他に財産はありませんでした。
Aさんが亡くなった場合Zさんは
この1000万円を3等分しなければならない。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


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2003年8月7日(木)

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