第232回
代金回収の究極の手段は破産の申立です。

苦しくて支払えないと言って
なかなか代金を支払ってくれないという取引先が
最近は増えていると思います。
じゃあ、本当に売り上げがないのかというと、
従業員も減っていないし、
社長の生活も変わっていないように見えます。
しかし、具体的な取引先はわからず、
差し押さえる財産はなかなか見当たりません。
そういう場合にどうやって
債権を回収するかというのが今日のお話です。

こういう場合には、一か八か
債権者側から相手方の破産の申立をします。
破産は、「自己破産」という言葉が一般化するくらい、
債務者が自ら申し立てるのが普通です。
しかし、破産は債権者側から申し立てることもできます。

破産してしまうと、営業は停止して、
残った財産を債権者に
分配するだけの手続きになってしまいます。
当然、相手方は苦しいのに
何とか営業を回しているのですから、
破産の申立により営業の停止となってしまうのは困るわけです。
社長が会社の連帯保証人になっていれば
社長個人も財産はなくなってしまうし、
営業が停止してしまえば、収入の道も途絶えてしまいます。
そこで、破産の申立をすると、
相手方から未払いになっている代金を支払うので、
申立を取り下げて欲しいと
言ってくる場合があるのです。
だから、破産の申立は債権回収の有効な手段となるのです。

しかし、いいことばかりではありません。
一か八かという面もあります。
というのは、今は、本当に苦しく、
社長個人がサラ金などから借り入れをして、
借金をぐるぐる回して事業を継続している会社も多いです。

そういう会社は、客観的に見て、
破産をして事業を止めた方がよい会社です。
そこに、債権者が債権者の費用で
破産の申立をしてくれるのですから、
相手方にとっては、渡りに船です。

このような場合、債権者が破産申立をすると、
債権者としては、破産手続きでは全く配当を得られず、
かつ、破産の申立費用の立替分も損することとなり、
全くいいことはありません。
したがって、破産の申立は、
一か八かの最終的な債権回収方法なのです。

今回で「物を売る」の講義は終了です。
さて、創業、会社経営に役立つ情報をということで、
約1年続けてきた
「大学では教えない。でも役に立つ法律講座」は、
今回の「物を売る」で終了です。

「お金を借りる」「事務所・店舗を借りる」
「物を売る」
までしか講義できませんでしたが、
ご愛読ありがとうございました。
借金の問題、事務所・店舗の賃料や明渡の問題、
売掛金の回収の問題は、相談の多いところです。
みなさんの役に立った、あるいは今後役に立てば、幸いです。

来週は、おまけで、
これまで取り上げられなかった
読者からの質問の一部を取り上げます。


■今週の宿題 ■
Aさんには、子供Xさん、Yさん、Zさんがいました。
ZさんがAさんの面倒を見ていたので、Zさんを受取人とする
1000万円の生命保険をかけていました。
Aさんの残した財産はこの生命保険のみで
他に財産はありませんでした。
Aさんが亡くなった場合Zさんは
この1000万円を3等分しなければならない。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


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2003年8月8日(金)

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