第233回
生命保険は遺産分割の対象にはなりません。

先週の宿題は
Aさんには、子供Xさん、Yさん、Zさんがいました。
ZさんがAさんの面倒を見ていたので、Zさんを受取人とする
1000万円の生命保険をかけていました。
Aさんの残した財産はこの生命保険のみで
他に財産はありませんでした。
Aさんが亡くなった場合Zさんは
この1000万円を3等分しなければならない。
○でしょうか? ×でしょうか?

という問題でした。
答えは、×です。

「お金を借りる」では
借金と相続の説明をしたところ、
相続自体の質問が多数来ました。
その一つが生命保険は
遺産分割の対象になるのかというものでした。

生命保険は、
受取人として指定された人のものですから、
遺産分割の対象とはなりません。
受取人の固有の財産ということになります。

ただ、相続人の中で、
一部の相続人のみ、生前家をもらっていたなど
特別の利益を得ている場合には、
既に遺産分割により相続を受けたものとして扱う
特別受益という制度があります。

例えば、宿題のケースで、
AさんはZさんに生前1000万円の現金を贈与した後に、
Aさんが2000万円を残して亡くなった場合を考えてください。
Zさんに生前贈与した1000万円を除いて遺産分割すると、
Xさん、Yさん、Zさんは2000万円の3分の1ずつで
666万6666円ずつ分けることになります。

しかし、特別受益の制度は、
Zさんへの生前贈与分も相続財産に加えて、
相続財産が3000万円あったことにします。
すると、Xさん、Yさん、Zさんは
3000万円の3分の1ずつで
1000万円ずつ分けることになります。
そして、Zさんは、既に1000万円もらっているので、
Aさんの残した2000万円をXさん、
Yさんが1000万円ずつ分けることになります。
これが特別受益の制度です。

生命保険がこの特別受益に当たるかは、
判例上争いがあります。
特別受益に当たらないという考え方が有力のようで、
この考え方に従えば、Zさんは、
Xさん、Yさんと生命保険を分ける必要はありません。

しかし、仮に特別受益に当たるという考え方が正しいとしても、
特別受益制度は、あくまでも生前もらったものを
遺産分割でもらったことにする制度であって、
もらったものを返さなければならない制度ではないので、
宿題のケースでは、Zさんは、
受け取った保険金をXさん、Yさんと分ける必要はありません。


■今日の宿題 ■
Aさんの借金1000万円について、
息子Xさんは連帯保証をしていました。
連帯保証をしている場合、
相続放棄をしても無駄なので、相続放棄をしなくてもよい。
でしょうか? ×でしょうか?

お答えをお待ちしております。


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2003年8月11日(月)

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