第682回
毎月11日は「列に並ぶ日」

北京市は来年にオリンピックを控え、
毎月11日を「列に並ぶ日」と制定しました。
「11」という数字が、
人が列に並んでいるように見えるため、
11日になったそうです。

中国ではバスや地下鉄に乗ったり、
モノやチケットを買ったりする際に
列に並ばなかったり列に割り込んだりする人が多いため、
オリンピックを見に来てくれる
外国人観光客に失礼のないように、
事前に市民に自覚を促す、という目的のようです。

初めての「列に並ぶ日」となった2月11日(日)には、
北京の繁華街・王府井で式典が行われ、
集まった200人以上の市民が
「秩序を守る文明市民になる」
という誓いを立てたそうです。

こうしたキャンペーンは心がけとしては
大変すばらしいと思います。
それに、北京には既に、言われなくても
きちんと列に並ぶ人がたくさんいます。
しかし、第398回 「並ばない遺伝子」でもお話ししたように、
それ以外の「並ばない遺伝子を持った人たち」が、
1年半やそこらの教育や啓蒙活動で並ぶようになるとは、
とても思えません。

では、どうしたらよいのでしょうか。

まず、物理的に列に並ばざるを得ない状況を作り出す、
という方法があります。

これは、北京のいくつかの公園の
チケット売り場などで既に導入されているのですが、
窓口の前に1人しか通れない幅で
鉄製の手すりを設置するのです。
こうすれば割り込みはできませんし、
窓口に沿ってベターっと
横の列ができることもありません。

しかし、この方法だと、
チケットを買った人が出て行く
わずかなスペースから入り込んで
チケットを買ってしまう人が出てきてしまいます。
チケットを買った人は出られるけれども、
逆からは入れないような何らかの工夫が必要です。

また、列に並ばせる、という発想から
離れるのも一案です。

例えば、マクドナルドでハンバーガーを買いたい人は、
銀行のように最初に整理券をもらって、
番号を呼ばれたら窓口に行って買う、
というのはどうでしょうか。
この方法ならば、一切の割り込みが不可能となります。

しかし、お客さんが多いと、
整理券発券機の前に列ができて、
そこで割り込みが発生、なんていう、
何のために整理券方式にしたのか
わからない状態になることもありえます。

ともあれ、北京市は、「列に並ぶ日」で
教育や啓蒙活動を行うのも良いのですが、
1年半後のオリンピックに間に合わせるためには、
「並ばない遺伝子を持った人たちを自発的に並ばせる」
という発想から離れる必要があるのではないでしょうか。


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2007年3月2日(金)

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