二十七、年と共に変わる料理の中身

中華料理は油っこいという先入観をもった人が多い。日本料理に比べて、中華料理の方が油の使用量が多いことは、統計数字を見るまでもなく、すぐにわかることであるが、西洋料理のバターやサラダ油の使い方に比べて多いということはないだろう。
「油っこい」という表現の中には、油を使った料理が多いことと、もう一つ、肉類の料理が多いという二通りの意味がある。揚げ物とか、炒め物とか、油で処理した料理が多いことは事実だし、また油のなかでも、豚油即ちラードを使うこともまた事実である。とりわけ料理屋はラードをふんだんに使用している。どうしてかというと、野菜を炒めるのにも、ビーフンや炒飯を炒めるにも、ラードを使った方が芳ばしいし、中華料理の風味が出るからである。
しかし、ラードはコレステロールと関係が深く、血液に悪影響を及ぼすという説がますます有力になったので、家庭料理ではラードを敬遠する傾向が強くなり、揚げ物はもとよりのこと、炒め物もサラダ油やゴマ油や落花生油に切りかえる人が多くなった。とりわけゴマ油は補血に大きな役割をはたすと漢方で信じられているから、産後の妊婦の補血食とか、冬の寒い季節の補品(精力増強食)には、ふんだんにゴマ油が使われている。ゴマ油には二種類あって、一種類は日本でよく売られている純正ゴマ油であり、もう一種類はゴマをいっぺん炒めてから搾油した黒ゴマ油である。黒ゴマをしぼったら黒いゴマ油になるのではなくて、炒めてからしぼると、黒い、芳ばしいゴマ油になるのである。
このゴマ油を使った料理には、麻油鶏とか麻油麺線とかいった家庭料理がある。麻油鶏は、鶏を一羽六切れくらいにぶった切って、黒ゴマ油でまず生薑を炒め、つづけて鶏の塊を炒める。
それに水をさして、ゆっくり煮る。ゴマ油はたっぶりにすること、生薑は大きいのを何切れかに切って入れればよく、これは臭味をとるのと、匂いをよくするためで、食べるわけではない。
当帰か枸杞を入れれば、薬臭くはなるが、身体はよくあたたまる。また、ゴマ油の代わりに、お酒を使ったものもあり、この方は焼酒鶏という。二つとも福建地方の家庭料理であり、台北に行くと、台湾料理屋のメニューに載っている。私がひいきにしているのは、中山北路の六条通りにある「鶏家荘」という店で、この店の鶏肉は骨ごと小さくぶった切ってあり、鶏血といって糯米を鶏の血でかためて蒸した餅と、さと芋を加えて煮ている。鍋料理の一種だから、四、五人で行って円卓を囲んで食べるのに向いている。

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