ガンを切らずに10年延命-関根 進

ベストセラー「ガンを切らずに10年延命」の著者
(元・週刊ポスト編集長)再開・新連載!

第7回
吐いて吐いて、吐きまくる

手際良く手術を遂行し、
手術の次の日から集中治療室から数十メートル離れた
自室まで歩行をさせられました。
胃の術後は数日で歩いた方が
回復力を早めるとは聞いていましたが、
びっくりするような術後回復法です。
手術も、はたで聞くと、体験してみるとは
違うことがたくさんありました。

ともすれば痛みに落ち込む患者に、
勇気を奮い立たせるためなのでしょう。
看護師長をはじめ、多くの看護師の皆さんの
温かい励ましと支えの声の中に包まれながら、
急速回復のパワーが漲って来たこととなりました。

しかし、手術直前まで、
巨大な胃ガンの腫瘍は生長し続け、
僕の食通を困難にしておりました。
お粥はともかく、ちょっとした旨そうな
副食を口にすれば、胸がむかむかして、
すぐにげーげー吐きまくる始末でした。

若き時代の暴飲美食の因果応報といえばそれまでですが、
「口腹の欲」は、70歳の僕を
とことん人生の絶壁に追い立てた
といったらよい状況でした。
おもわず、マクロビオティック食養生法の大先達
岡田周三(初代・正食協会会長)の
「食う欲ほど恐いものなし」
という警句を思い出してしまいました。

僕が、胃ガンに攻め立てられても、食い意地をはって、
げーげー吐きまくったときの
日記メモをちょっと紹介しましょう。

               *

10月13日 旨そうなサンマの焼き物をちょっと食って吐く。
同時に、口腔にヘルペスが出て、つぶれて血を吐く。

10月15日 冷房に当たって吐く。
夜は睡眠剤をもらって早く寝る。助かる。
10月16日 吐き気、ムカつき。
好物のジャガイモの煮つけを食べて吐く。

10月17日 栄養点滴のほか、輸血始まる
カミさん来る。「顔色よくなった」という。
輸血と栄養点滴のせいだろう。
相変わらず、吐き気と腹の膨満感。
やっと、真っ黒なゆるゆるのウンチを排便。
これは愛用の「天仙栓」という座薬を少々使って出す。
少し気分和らぐ。(以下略)

               *

これくらい苦労するなら、
齢70歳、せっかくもらった余録の人生
なんとしても、この難局を、胃ガン手術で、
まずは乗り切ろうと改めて決意を固くしたわけです。
下手な演歌じゃないが、
こんなやけ糞な歌をうたいたくなりました。
「どうせ拾った いのちだもの 矢でもメスでも 持ってこい〜」

携帯してきたモバイルパソコンを引き出して、
まだ、戯言のように「闘病游句」を書いて、
気晴らしとしたものでした。

●食う欲ほど 恐いものなし 鰯雲〜
●この世との さらばとなるか 粥一杯〜
●若き日の 美食の因果(はて)の 胃・肝・道〜
●胃の膨満 もたれムカつき もう勘弁な〜
●おいガンめ  食道の仇打ちは 胃・肝臓(いかんぞう)〜
●半断食 医師も呆れる 骨と皮〜
●死の際(きわ)で ゴテてやるか 閻魔にも〜
●ガン連発 叩いて焼いて 切る阿呆〜
●関根さん お陀仏さん?と 見舞顔〜

9連句まで書いて、こりゃ、愚痴ばかりでイカンイカン。
自分で覚悟した「いのちの高みへのギアチェンジ」など、
これではままならぬと思い直し、
最後に、次の句を書いて、
ムカつく腹を抱えながら、やっと眠りにつきました。

●落ち込むな 朝の来ない 夜はない〜


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2010年11月30日(火)

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