ガンを切らずに10年延命-関根 進

ベストセラー「ガンを切らずに10年延命」の著者
(元・週刊ポスト編集長)再開・新連載!

第10回
≪偉大な医師≫ほど、傷口も≪偉大≫?

鈴木毅医師はまさに、
技術に優れているだけでなく思いやりの人です。

最新の手術法にも研究熱心ですが、
「偉大な外科医は、傷口を偉大に切る」――
昔、これが主流というか自慢気に通用しました。
しかし、いまは傷口を小さく切っても広げて、
奥の臓器を診断する技術が開発されましたから
小さく切り開いて、的確に切り取る・・・、
これが最新のヒューマンな方法なのですね。
患者の負担も少ない。回復力も早まります。」と
実に頼もしいことを、いともにこやかに話す、
気さくな先生なのです。

僕の親友の愛称・布袋(ほてい)さんがという人がいます。
腎臓ガン誤診手術の傷跡を
見せてもらった事がありますが、太鼓のような
大きな脇腹に刻まれた40センチもある切り傷に比べたら、
僕の臍上12センチほどの
「開腹切り傷」は可愛いでものでした。

よく、ガン病棟に長居をしていると、
何度も開腹手術を繰り返した、
「牢名主」のようなベテラン患者さんがいて、
大きな腹の切り傷を自慢げに見せる人がおられます。
それは、先輩からいろいろなことを学ぶ契機となりますから、
有難く拝見しますが、中には、
縦横十文字まがいに切った患者さんもいて、
「腹切りは十字架じゃなきゃ一人前じゃねえ」などと、
豪快に笑う人もおりました。
しかし、いまや、無謀に傷口を大きく開き、
心配される臓器まで切りまくる、拡大手術は時代遅れのようです。

ガンには、それぞれの人の「縁」と「運」が付きまといますが、
手術を受ける場合、
どこの誰兵衛さんだかわからない医師に身を任せ、
ただマニュアル通りに執刀されたのでは心もとないものです。
患者は「壊れた機械」ではありません。
たとえ、むごい手術に直面しようとも、
なんとしても、自らの自然治癒力を上げよう、
生命力を取り戻そうと、
その難局から、必死にもがく、不思議なパワーをもっている
「いのちの塊」なのですね。
僕は、今回も随分と悩みましたが、幸運な「縁と運」に恵まれ、
自然治癒力を回復する道を歩めたのだと感謝しているわけです。

鈴木毅医師には数年前に、ガンではなく、
脂肪の塊の小さなコブの手術をしてもらった「縁」があり、
よい人柄も存じあげていたので、
この「縁」は、とても幸運を呼び込んだようでした。

意外と、胃ガン術後の回復は速いとは聞いていましたが、
まず数日間は「激痛の地獄」です。
術後の傷口の痛みはもちろん、のどの奥や胃の脇腹、尿管から、
痰や排泄物をとりだすカテーテルの管、
そして、栄養や輸血用の点滴の管が刺さっており、
いわゆる、スパゲッティ状態となっていますから、
少しでも動いたり、体をひねったりすれば激痛が走ります。
しかし、そこを通り過ぎ、
カテーテルの管が一つ一つ外れていく度に、
めきめき回復するのが分かり、嬉しくなってきます。
ああ、生きていてよかったなァと実感します。

もう少し、術後直後の様子をしたためておきます。

19日午後1時より手術。
翌20日、早朝、麻酔も取れて、目が覚める。
そして、午前11時ころ、突然、担当の看護師さんから、
体をふいた後、「腹帯で傷口をしっかり撒きますから、
ご自分の部屋まで、歩いて帰りましょう」・・・
といわれたときは、いささかあわてました。

『菩薩』の看護師さんたちの顔が、突然、
『鬼』のように見えたといって言い過ぎではありません。
しかし、I看護師長の優しい励ましの言葉にサポートされて、
トボトボですが、スチールの点滴棒を杖代わりに、
数十メートルの廊下を歩いて帰れたのは、
我ながらびっくりしました。

これが、人間が醸し出す、
「自然治癒力」=科学でも割り切れない
「見えざる力」のいのちの不思議さの原点に違いないと悟りました。


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2010年12月3日(金)

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