第14回
一人の親友は百人の親類より尊し
たしかに、胃の下部に爆発した糜爛した巨大腫瘍は
日に日に、僕の食通を拒否していたわけです。
体を衰弱させるばかりか、
医師も心配するように、貧血の度合いを高め、
肝臓転移、腹部リンパ転移とともに、胃の裏側の
膵臓に浸潤しているのではないか?
という危機感を広げて居りました。
ウンチは胃の出血のために暗黒色を帯びていました。
しかし、「絶望は最大の毒薬」としかなりません。
12年間の「食道ガン切らずに治した」ことも
生命場向上の勝利なら、
こんどの「胃ガン切って回復」も、
生命場の向上の勝利となることを、日々、祈って居りました。
もう少し分かりやすくいえば、
この病院のスタッフの温かさ、
そして、遠く川越まで車を飛ばして見舞いに来てくれた
親友盟友たちの笑顔にどれだけ励まされたことか?
まさに、僕は彼岸に引きずられた時、
この人たちのパワーのお蔭で
ぐいぐいと此岸に引き戻される思いがしたからです。
本当によい「縁と運」に恵まれました。
この病院からなら、
再び「さらなる高みへのギアチェンジ」が可能だ。
少なくとも、余命3カ月ではなく、半年でも、また半年でも
「いのちの高み」にむかって、トキメキに一日一日を
過ごせ得るのではないかと、思ったのです。
僕自身が、緊急入院したといっても、
もう、同じ年頃の60代、70代の友人や知人たちならば、
誰しもが、1回や2回、大病や大手術は経験している、
いわば、「切られの与三郎」のはずですから
最初は誰にも知らせませんでした
しかし、僕の闘病記にも、まえにときどき登場してもらい、
この12年間、親身に支えてくれた
二人の親友 =愛称・絶倫(ぜつりん)くんと、
布袋(ほてい)さんだけには、
前もって、「今生の別れとはならない」にしても、
真実を打ち明けておきました。
“布袋さん”は、前にも書きましたが、
12年前に腎臓ガンと誤診されて手術をうけた、
ベンチャーキャピタリスト。いつもニコニコ、太っちょで
まさに、布袋さんの温かさを持つ人です。
“絶倫くん”は、12年前に頑として「食道ガンは切るな」と、
僕をガン病棟から“拉致”しようとした
作家で出版社社長の健康マニアです。
この人も、数年前に足を複雑骨折して
大手術したツワモノですから、
今回も、我がことのように心配し、相談にも乗ってくれたわけです。
もう一人、同郷・和歌山の後輩で、かつて
女性誌「ポップティーン」を創刊ベストセラーにした名編集長の
愛称イケメンくんなども、2回も車を飛ばして、
懐かしい紀州ミカンを見舞いにもって来てくれました。
僕の妻も、ガンに関しては、とくに食事療法で献身的に
尽くしてくれていますが、男同士の腹を割った相談には、
やはり、親友は『宝』です。
あなたも、二人、三人の心を割って話せる
親友を持っていると思いますが、
この世知辛い世の中です。
「一人の親友は百人の親類より頼りになる」
という諺もあります。
続きはまた明日。
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