誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第6回
戦う肉体

平和な時代におかしな話だが、
最近、「常在戦場」ということをよく考える。
戦場というと途端にキナ臭いけはいが漂いはじめ、
眉をひそめる人があるが、
別段、テポドンが飛んできたらどうしよう
と日夜頭を悩ませているわけではない。
しかし無差別テロに通り魔事件、
おやじ狩りにストーカー行為。
世の中がだんだん物騒になってくると、
いつどこでどんな厄災に遭うかわからない。

数年前、私の友人が仕事帰りにおやじ狩りの標的にされた。
金属バットを持った数人の若者たちに襲われ、
危うく身ぐるみ剥がされそうになったのだ。
「ブンという風切り音が
 頭上をかすめていったのは覚えているんだけど……」
と奇跡的に難を逃れた友人は、
金属バットを振りおろされた時の恐怖を語ってくれたものだ。
これとても、たまたま運動神経がよく、
日頃身体を鍛えていたおかげで逃げおおせられたにすぎない。
駅の階段でさえ息切れがするような
ブヨブヨの肉体であれば、
格好の餌食になっていただろう。

そういえば、戦中派で軍隊経験を持つ私たちの父親世代は、
ひいき目の買いかぶりかも知れぬが、
みな体つきがタイトで、動きが俊敏だったような気がする。
嵐が来れば屋根瓦を修理し、
大掃除には隆々たる力こぶで畳上げをした。
しかし、今や高度に発達したテクノロジー社会である。
男の筋肉には出番がなくなり、
ただパソコンが打てればいい、
という間延びしたご時世になってしまった。
こうなると男たちはとんと精彩を欠き、
そのぶん女たちが輝きはじめる。

中高年になると内臓脂肪がみっしりつき、
腹が大きく突き出てくる。
貫禄がついたと賛美されたのは昔の話で、
今は嘲笑の対象でしかない。
実際、腹が出ていてよいことなど何もない。
フットワークは悪くなるし、靴下は履けないし、
まずもってTシャツが似合わない。
だいいち、萎えしおれた筋肉には、
ある方向へ運動を起こそうという男の意志力が感じられない。
もちろん、かつて男たちを輝かせた闘争心も感じられず、
当然ながらカッコよくないし美しくもない。
口はばったいようだが、
男は肉体も精神も美しくなくてはならないと思うのだ。
男が男らしくなれば、
女もよろず異性との「差」に改めて魅了され、
より女らしくなってくれる(と思うのだが……)。


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