誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第7回
おやじはもっとセクシーに

欧米では“セクシー”と呼ばれるのが
最高の褒め言葉なのだという。
女ではない、男の話である。
セクシーといったって、杉様みたいに流し目をしたり、
隆々たる筋肉でマッチョな男性美を誇るたぐいの
薄っぺらな男のことではない。
聡明で誇り高く、
どこか静かなる意志力を感じさせるやさしい男を
セクシーと呼ぶのである。

日本の男たちのセクシー度は、
世界でも最低クラスなのだそうだ。
海外では日本女性はモテモテ
(イエローキャブ的なモテ方にはちと問題ありだが)だが、
逆に男はさっぱりモテない。
問題は肉体的魅力の貧相さにあるのではなく、
むしろ貧しき精神にあるという。
米国滞在が長かった友人の奥さんはこう言い放つ。

「言葉が不自由で女性と意志疎通ができないというのもあるけど、
 概してエリートと呼ばれる連中は
 傲慢でjerk かgeekがやたら多いの。
 要は鼻持ちならないのよ」

彼女の眼に映った日本の企業エリートたちは、
悲しいかな“バカか変態オタク”ばかりだという。
セクシーな男というと、私はまず白洲次郎を思い浮かべる。
ケンブリッジ大学を出て、吉田茂首相の懐刀といわれ、
後に東北電力の会長などを歴任した男。
GHQの高官が
「白洲さんの英語は大変立派な英語ですね」と言ったら
「あなたももう少し勉強すれば立派な英語になれますよ」
と皮肉たっぷりに切り返した男。
あの白洲正子の旦那といったほうが話が早いか。
上背があってマスクもいい。
遺言は「葬式無用、戒名不用」の二行のみ。
なんともカッコいいおやじなのである。

白洲次郎のセクシーさは、
見てくれの良さと英国仕込みの紳士道のせいばかりではない。
相手がたとえ総理大臣であっても、
お前の歩き方は土建屋みたいだ、とまったく遠慮がない。
身の内に厳格なプリンシプルがあって、
それが凛とした行動や言葉になって顕れてくる。
傲岸不遜に映るかも知れないが、かえってそれがカッコいい。
つまるところ、見てくれなどどうでもいい。
ハゲだろうとちんちくりんだろうと卑下することはない。
要は日本の文化や歴史に誇りを持ち、
高い倫理観を有し、常住坐臥、
いつも毅然としている男がセクシーなのである。
そんな男、いまどきいるかって?
いるかいないかではない。

「……サウイフモノニワタシハナリタイ」のだ。


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