誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第40回
車内メイカー (その二)

前回、女は「化粧する動物」だと書いたが、
実は男だって化粧をする。
男が化粧をしたりしなかったりするのは、
その時代の男女の力関係によるという。
駿河国の戦国大名、今川義元は
お歯黒をし、高眉、薄化粧をしていたというが、
これはどうも後世の創作のようで、今ひとつ信憑性に欠ける。
だが平安時代の殿上人たちが、
白粉を塗り、お歯黒をし、美しく着飾っていたことは事実のようだ。

なぜ平安貴族が化粧したのかというと、
宮廷を中心に夫が妻の家を訪れる
“妻問い婚”がポピュラーであったためだろう、
と専門家は言っている。
女性に選ばれるためには化粧をし、
男のフェロモンをふりまき、
魅力を最大限アピールしなければならない。
当時、女は「選ぶ人」で、男は「選ばれる人」であった。

早い話、女が強くなると男は化粧し始める、
という理屈になる。
近頃、女みたいなシスターボーイ(古いね)が増えているという。
なかにはビューラーを使い睫毛を上げ、
エステにも通うナルっぽい男たちも出現しているというから、
現代は明らかに女上位といえる。
男の“車内メイカー”が登場してくるのも時間の問題だろう。

元来、男は鏡がきらいだった。
鏡をおそれていた。
どこかの国の大統領が
「40になったら男は顔に責任をもて」
などと余計なことを言うものだから、
ますます鏡がきらいになった。
そしていつの間にか、
男の顔は「履歴書」にされ、
鏡を見るたびに理不尽なプレッシャーを感じるようになった。

男というものは、よほどのナルちゃんでないかぎり、
鏡に映った薄っぺらな白面郎を見ると、
自分の未熟さ、至らなさを感じ、
つい眼をそむけたくなるものだ。
その点、女は違う。
鏡に映るのはもっぱら皮膚の表面で、
心の中まで映し出すことはまずない。
たとえ映し出したとしても気づかない。
でなければ、何時間も倦かずに
鏡に魅入っていられるはずがないからだ。
鏡は男がのぞくと皮膚の奥の世界を見せ、
女がのぞくと皮膚の表面のデコボコしか見せない。

しかしこの“説”も「ナル男」の出現によって、
にわかに怪しくなってきた。
情勢はますます厳しいものになっている。
時代に遅れたくない者は、
今から化粧法を学んでおいたほうがいいかも知れない。


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