誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第84回
なにがニートだ!

TVニュースの特集で、
いわゆるニート(NEET)問題について取り上げていた。
ニートとは学校に行かず、職にも就かない若年無業者のことで、
今や50万人以上、
フリーターの数と合わせると、
約270万人の若者が正業に就いていないという。

番組に登場したのは24歳の男で、
一日じゅう部屋に閉じこもり、
テレビゲームをして遊び呆けている。
一度、就職したことがあるらしいのだが続かず、
以来4年近くニートをやっている。
見たところ体つきは立派で、
やや太りぎみではあるが血色もよく、
工事現場などでこき使ってやれば、
少しはモノの役に立ちそうに見えるのだが、
自立したいという意欲は毛ほども感じられない。
他の兄弟二人はまっとうで、
「働かざるもの食うべからずよ」
とこの長男に終始批判的で、
その批判の矢は父親や母親にも容赦なく向けられていた。

このダメ男は、妹や弟、父親がいなくなったころを見計らい、
階下に降りてくる。
長男に輪をかけてダメなのは、
このろくでなしを溺愛してやまぬ母親だ。
叱るでもなく戒めるでもなく、
かいがいしく台所に立って朝めしの用意をしてやっている。
「いけないとは思うのだけど、強く叱れないのよね」
と母親。
おそらく子供のころから甘やかし放題で、
絶えて叱ったことなどないのだろう。

この母親に輪をかけてダメなのは、サラリーマンの父親だ。
夜遅く帰宅して、
この役立たずの総領息子と二人だけで食卓を囲むのだが、
双方とも無言。
一言も口をきかない。
それでも「子どもには、昔から自由放任主義でやってきた」
と開き直ったようにポツリ。
その自由放任主義がバカ息子を生む温床になったとは
思いも及ばぬようで、
テレビを見ながらただ黙々とめしを食っている。
私は思わず「この大バカ野郎!」と叫んでしまった。

この人間関係の冷え切った家には、
ルールと呼ぶべきものが何ひとつない。
過保護の母親に自由放任主義を標榜する父親。
子供らは厳しくしつけられていないため、
いつまで経っても「さなぎ」から「蝶」になれない。
こんな穀つぶし、とっとと追い出してしまえばいいのだ、
と私なら思うのだが、それはやらない。
やる勇気もない。
司馬遼太郎の『菜の花の沖』で知られる高田屋嘉兵衛は、
奉公に出る際にこう言ったという。
「十一にもなって、親の飯を食うておれんわい」


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