「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第5回
入門編(5)
これからの時代

日本では骨董といえば茶道具が思い浮かぶほど
骨董と茶道具は同意語の関係だ。
しかし、近年部屋を飾ったり、
日常の生活道具の中に古い食器を用いたりする人たちが増えている。
茶道は今大きな曲がり角に来ているように思われる。
茶道人口は日本の社会構造と同様どんどん高齢化し、
若い人たちがその世界に入っていかない。
その為茶道具余りだしているような現状だ。
僕など時々お茶の先生に呼ばれて講演をするのだが、
後ろの方では足が痛くて椅子に掛けている人も沢山いるし、
その部屋の中にはサロンパスの匂いがかすかに漂っている。
そんな現状だから
骨董の世界で茶道具中心にビジネスや蒐集を考えていると
きっと大変難しい状況が生まれると思う。
勿論どんな時代が来ても
優れた良い作品は好まれ大切にされると思うが、
大きな流れは変わらないだろう。

それに対し室内装飾というかインテリア向きの古美術作品などは
住宅のスペースが当然大きくなったり内容が良くなったりするので
需要は増してくるように思われる。
骨董をベースにした心地よい住まい作りは
これからの若い人のもっとも得意とする分野であろう。
さらにもう一つこの世界で見落としてはしてはならないのは
若い女性達の優れた感性の中から生まれる生活骨董である。
歴史や特色のある窯場の作品と
料理を取り合わせて楽しむと言う世界は
これからまだまだ大きなニーズがあるように思われる。

昨今のグローバルな日本経済の中に身を置く人々は
どこか神経を病んでいる。
それを癒すには身の回りのインテリアを考えてみるのも必要だ。
僕は東南アジアを歩いているので良くわかる。
あの地域のゆったりとした時の流れの中から生み出された作品を
身近に置くと何かほっとし、心が豊かになるような気がする。
そんな作品の中に東南アジア仏教美術の世界がある。
ラオスの可愛い金銅仏、ビルマの白大理石の仏像。
カンボジアの石像彫刻などヨーロッパ人にもニーズが高い。
投資的に考えてもこれから楽しみな世界だ。
東南アジア骨董は注目に値するこれからのフィールドだろう。

玄関ドアにはインドで買った木彫の牛がお帰りと言ってくれる。
ドアを開けると下駄箱の上に
ビルマの可愛い金銅仏が手編みのレースの敷物の上に置いてある。
スポットライトが上から落ちて美しい陰影を表している。
正面の壁には
ベトナムで買った手漕ぎのオールが斜めにぶら下がっている。
よく使い込まれたチークの鼈甲色をした肌が
とてもすばらしい雰囲気をかもし出している。
そのままリビングに入ると棚には中国、アンダーソンの土器や
旅行の時々に買い求めた青銅の馬や鳥の焼き物が置いてある。
自分だけの空間が出来上がって
その部屋に入ることがとても心地よい。
こんな生活を楽しむ人々が今どんどん増えている。
東南アジアは安物、稚拙だとの固定観念にとらわれることなく
時代や変化を嗅ぎ分けることが大切だ。


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