第64回
百円でも要りません!
フリーマーケットに参加したときのことです。
最初は飛ぶように売れていた物が
少しづつ売れなくなってきました。
そこで、バナナの叩き売りのように、
「全部百円でーす!!!百円、百円!!」
と一気に値下げしました。
儲かる、儲からない、ということではなく、
売れ残った物を家に持ち帰るのが面倒に思ったのです。
値下げをすると、
どんどん目の前のものは売れていきました。
こういう時は気分も最高です。
しかし、暫くするとまた元のように
売れなくなってしまいました。
目の前には、セーターが2枚だけ残っています。
15年程前に3万円で買ったセーター。
さすがに毎年冬になると、
「このセーターを着るのはもう飽き飽き。
いい物を買っても、全然悪くならない。
かと言って捨てるのもなあ」
という良心の呵責にさいなまれ、
フリーマーケット行きになったのです。
築地で働いている感じの、
肝っ玉母さんがセーターを手にとってくれました。
東京でも、銀座から海辺にいくと冬は寒いのです。
私は百円なら一冬着るくらいの気分で、
買ってくれるのではないかと期待しました。
しかし、次の瞬間そのお母さんは、
「色が好きじゃないから、要らない」
と言い放ったのです。
私はこの瞬間商売の厳しさを感じました。
百円均一のお店を歩くのが面白く、
たまに行くのですが、そこでも百円だからといって
全ての商品を買う訳ではありません。
コンビニの商品は大抵百円均一のお店に置いてあります。
その中で、今必要な物、または
百円だからこそ、無駄でも「許す」物を買います。
私のセーターは、お母さんにとって、
「許せない」無駄なのです。
このお母さんのように、
消費する人の感度がよくなってきている中で、
売れるものを探すのは大変なことです。
女性が美しく年輪を重ねるための商品とは、
一体どんな物でしょうか。
きっとキーワードは、
「無駄でも、許せる物」だと思います。
知識や教養、気分など、そんな無駄があったら
豊かになれそうな気がしませんか。
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