杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第73回
千円≒壱万円の人

銀座の百貨店の靴売り場を歩いていた時のことです。
品のいい、70歳位の女性が楽しそうに靴を見ていました。
あまりに素敵な女性なので、
私は磁石に引きつけられるように近づいていき、
商品を見る振りをしながら、
女性の様子を窺っていました。
お化粧は薄く、薄いグレーのスーツをさりげなく着こなす
お婆ちゃんの年代の女性は、
2,3足靴を試し、10分もたたないでお買い物をしました。
その靴に目をやると、
私はまたまたひっくり返りそうになりました。
なんとお値段、7万5千円!
私は0(ゼロ)の数を数え間違えたのかと、
ゆっくりと再確認しました。
確かに、0は3つ、コンマの位置もあっています。
世の中に7万5千円の靴が存在することは、
雑誌を読んでいて知っていました。
けれど、そういう雑誌を見て
「こんなに高価な靴を買う人が、この世の中にいると思うの?」
と軽い気持ちで読み飛ばしていました。
けれど、実際に銀座でその値段で買い物をする人がいるのです。
これは、私が上京し、銀座を歩くようになって
初めて経験したことです。
こういう人は、私の壱万円を千円の感覚で使う人。
そしてこれが、銀座。
昔から大人の街といわれる所以は、
お金に対する感覚が違う人が集まる街だからでしょう。
私のようなサラリーマン家庭の人間は、
本当の意味で銀座を堪能することはできないのかもしれません。

7万5千円の靴をひょいと買う人と、
サラリーマン家庭の私とでは、
美容に対する考え方も違うでしょう。
けれど、銀座でその靴を買った女性に惹かれました。
それは、その女性に傲慢さがなかったから。
どんな経済状態であっても、
謙虚な気持ちを持ちつづけることは、
内面的にだけでなく、外見的にも魅力的です。
それに、謙虚さの漂う女性は清楚。


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