第81回
自意識過剰ぎみの傾向と対策
私はアガリ症です。
演奏する場所に慣れない、
一緒に演奏する人の数がいつもと違うというだけで
心臓がどきどきします。
自意識過剰な、アガリ症の傾向です。
先日も結婚式でピアノを弾くことになっていました。
いつもは4人以上で演奏しているのですが、
今回は一人で頼まれました。
実家のピアノで予定の曲を弾いていると、
母が一言、「その曲は暗い」
というではありませんか。
日本語で、「私は貴方を愛し続けるでしょう」
というタイトルの大曲を弾く予定でした。
一度お客さんの前でも弾いており、
感触もとてもよかったのでこの曲を選んだのです。
けれど、母の一言で私は慌てました。
「結婚式に暗いのは、やっぱりまずいなあ」
ということで、
急遽可愛い感じの小曲に替えることにしました。
大好きな曲で、身体に染み付いた曲です。
結婚式の会場で、私はリハーサルをし、
人が来るのを待っていました。
その頃からなんだか、嫌な予感がしてきました。
鼓動が大きくなっていくのがわかるのです。
式が済み、披露宴が始まりました。
私は目の前の、たまに食べるご馳走が喉を通りません。
とうとう演奏の時が来ました。
私は一人で音を出しました。
その時に感じたのです。
「いつもより、音がない!」
当たり前です。
ベースとドラムがいないのですから。
空間を一人で埋めるのと、3人で埋めるのとでは違います。
人数が少なければ、当然一人にかかる比重は大きいのです。
私はいつも当たり前になっていた、
ベーシストとドラムの存在に感謝しました。
「いつも、助けられていたんだ」
本番を終え、実感したのです。
彼らに対して威張っていた訳ではありませんが、
謙虚な気持ちになったことはありませんでした。
こんなことでもなければ、
私のような人間はどんどんと傲慢になっていきます。
いつも、謙虚にさせてくれる
この自意識過剰のアガリ症もまた
私にとっては意味があることなのです。
そして、まさに謙虚になることが自意識過剰の対策に
なるような気がします。
謙虚に現実を受け入れ、
そこから何をすべきかを考えることは、
これから私が年齢を重ねていく上でも
大切なことだと思います。
夢ばかりみていても始まらないのですから。
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