第87回
夢よりも遠くにいる人へ
ある意味で、夢を叶えることは簡単です。
超せっかちな私は、
夢が叶おうが、叶わなくても、
悩む前から千里の道のりのスタート地点に立ちます。
殆ど溺れ死にそうになっても、
必死で泳ぎつづければ、五百里位には行き着きます。
「やりたいことがない」というのは、
感度が鈍いだけで、
「やりたいことが多くて困る」位でなければ、
好奇心が旺盛な人とは言えないのではないでしょうか。
けれど、どうしても、叶わないことがあります。
それは、他人の心を操縦すること。
私は抱いた夢よりも遠く感じます。
離れ離れになってしまった恋人、
かつて仲のよかった友達、
遠くに旅立ってしまった祖父など、
きっと二度と会うことが無いであろう人と
もう一度話してみたいと思うことがあります。
「あの時、自分が未熟で、傷つけてしまいました。
どうか、許してもらえないでしょうか」
ということを一言だけ告げて、去るのです。
「夢で会えたら」という名曲を聞くたびに、
同じ思いを持った人がいるのだな、
と安心します。
過ぎてしまったことは、仕方がありません。
今、目の前にいる、たった一人の人に対して、
自分と幸せを分かち合えるか、
ということも大切にしなくてなりません。
友達とコーヒーを飲んでいるときも、
どうせ、縁あって友達になったのだから、
その瞬間を大切にすることも大切です。
これから出会う、多くの人とも
そんな気持ちで接することができたらいいと思います。
しかし、既婚女性が街でばったり昔の恋人に会って、
「その時、その瞬間、確かに愛していた」
という名目の元、刹那的な恋に走ることは
お薦めできません。
「昔より綺麗になった」
と相手に思ってもらい、その余韻を残して
自分は去るというのが、美的。
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