杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第88回
コンピング好きなピアニスト

私はコンピングの好きなピアニストです。
コンピングというのは、
サックスやトランペットが前で吹いている時に、
「ブンチャッチャ−」とか後ろで弾いていることをさします。
一般的に、日本では「バッキング」という言葉で、
アメリカでは「コンピング」と呼ばれています。
主役を食わないけれど、後ろ如何で
バンドのリズムがうねったり、色々な和音を重ねることで
全体の音の色彩ががらりと変わったりします。
それを流れる音楽のタイムと一緒に瞬時に判断して、
いかに豊かなものがバランスとして作れるか、
ということに命を賭けています。
実験を色々試みていますので、
時には、高音が多すぎて管楽器を活かせない、
もっと和音の色彩を工夫すべき、
などと何度やっても満足することはありません。
私は演奏しながら、
「私の人生に似ているな」と感じました。
主役がいて、その後ろで思いっきり暴れまくる、
というのが「私らしい」のではないかと気が付きました。
時に管楽器を脅し、時に奉り、彩りを加えるのが好きなのです。
私は、アドリブを「聴かす」タイプではありません。
今現在、まだ未熟である、ということもありますが、
きっとコンピングが好きなのは一生変わらないでしょう。
それだけやっていれば幸せだと思う時さえあります。
大抵のピアニストは、
自分がずっとアドリブをやっていたいと考え、
ピアノトリオ(ピアノ、ベース、ドラム)を作ろうとします。
私にはトリオは考えられませんので、
BGM的な仕事の時だけ、
ピアノを主役にした編成にしています。
役者さんで言うなれば、名脇役志願ということです。
主役を引き立てる、
なくてはならない存在の役者さんであることに、
魅力を感じているのです。

「主役」が性に合う人もいれば、
「脇役」が合っている人もいると思いませんか。
歌手のユーミンなどは、「主役」が合っていて、
ご主人の松任谷さんは「脇役」が合っています。
このように女性が「主役」になっている場合もありますが、
世の中はまだまだ男性社会です。
有能な女性の力を活かす場所というのは限られています。
サラリーマンの一般家庭の場合は、
男性が「主役」にならざる得ない状況です。
けれど、「脇役」がいるから「主役」は引き立つのです。
一般家庭の女性は
「名脇役」になる可能性があると思います。
皆さんは「主役」「脇役」のどちらのタイプですか。


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