杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第108回
小さなコレクションで、大きな世界へ

私の母はピアスをしています。
もう、15年も前になると思います。
「家でピアスをしているのは私だけ」
と私達娘を前に優越感に浸っていました。
そう、何を隠そう、私の母は人よりも先に行く、
ということが大好きなのです。
「家電製品を買うときは、とにかく
一番、一番、新しい商品を買いなさい。
型落ちの値引きした家電を買ってはいけません」
と「一番」を強調します。
ピアスも、母の年齢では、
「一番」先に行っているアイテムの一つだと
勝手に思い込んでいる節があります。
母の耳元はいつも小さな色が付いています。
あの「点」のようなピアスがさりげなく、お洒落です。
家には少しづつピアスが増え始めました。
「このピアスはハワイ旅行に行った時に買った」
「こっちは、千円で安いけど、遊び用」
「ついでに、こっちは会社の女の子が旅行に行った時に
これが似合うと言ったから買った」
とまるでピアスに対して、
恋人との思い出を語るような口ぶりです。
私はピアスにも興味はないのですが、
実物を見ているとあまりに可愛く、話しに付き合っていました。

母がピアスを買って変わったことがあります。
当然ですが、買い物の最中に、ピアスを見るようになったのです。
ということは、先ほどのハワイ旅行の時にも
ピアスを見ていた、ということになります。
それは、旅行をする上で、
ひとつ楽しみが増えたということです。
私はピアスもしていないので、
旅行に行っても、母よりも楽しみが一つ減っているのです。

私の母はたまたまピアスに関心がありました。
それが、もし「お箸」や「スプーン」だとしても、
行動範囲が変化する可能性があります。
「お箸」を求めて京都まで行く、
「スプーン」を求めて、ニューヨークやイギリス、中国に行く
など考えただけでも、楽しいではありませんか。
世界中には色々なスプーンがあるはずです。
女性の身近なコレクションも、なんだか奥が深そう。


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2003年10月29日(水)

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