杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第114回
拷問体験しています

私は人前で演奏する時に必ずMDで録音します。
そして、必ず家で一人反省をします。
日本のトップミュージシャンも、
お客さんが少ない時には
お店の片隅にMDを置いて録音しています。
私は何度もそういう光景を見てきました。

私はこう考えます。
「素晴らしい音楽は耳が覚えている。
だから、自分の音楽が素晴らしくなるまで、練習する」
日本はお金持ちですから、
世界標準の音楽家を招くことが出来ます。
みな、雷に打たれたような感動をした経験があるはずです。
CDを出すような世界標準の音楽家に
一歩でも近付きたいのです。
それは、日本でトップであろうと、
音楽を始めたばかりの人でも変わりません。
しかし、この自分の演奏を反省することの苦痛は、
味わった者でしか分からないと思います。
はっきり言って、「拷問」です。
けれど、耳だけは肥えて理想は高いのです。
このギャップを埋めるために、みな必死で生きています。
日本でもトップを走る人はもっと大変です。
注意をしてくれる人は、殆どいないはずだから。
自分の演奏のどこが、どう納得できないのか、
世界標準に比べて何が足らないのか、
分析、解析を冷静に行わなくてはならないのです。
製造業の技術屋さんが、世界標準で物作りをしていますが、
音楽家も一人一人が同じことをしている
と考えて頂ければ同じことです。

女優さんが人前に出てどんどん美しくなるのは、
きっとこの「拷問」体験があるからだと思います。
TVや映画にに出ている自分が「許せない」
と感じた経験は必ずあるのではないでしょうか。
自由業のプロはこの「拷問」体験を
一生続けなくてはならないのだと思います。
ただ「拷問」体験にもメリットがあります。
自分が乗り越えなければならない壁と比べると、
つまらない人間関係の柵など
どうでもよくなる程辛い、という効能はあります。
気持ちの若い方にはお薦め。


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