杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第121回
日本語ベラベラ

母と銀座のソニアリキエルに行った時のことです。
「お嬢様がお召しになった方がよろしいかと存じ上げます」
と店員さんが言いました。
その瞬間、母は私の方をチラリと見たのです。
「これは、後で何かある」と思っていたら、
「さっきの店員さんはすごいねえ」
とか言いながら、「お嬢様が・・・」
と真似をし始めたのです。
けれど、舌を噛んで上手く言えません。
そうです。私の母は日本語がベラベラではないのです。
特にカタカナの名前は全滅です。
「プロジェクト エックス」は、「エッキス(X)プロジェキト」
とか平気で使っています。
私は初級の英会話を習ったら治るのではないかと思い、
母に勧めました。
しかし、「海外旅行が趣味の人が言ってたけど、
世界中日本語が通じるって言ってた」
とか言いながら、全くやる気がありません。
母は何十年もOLをやっていたので、
自分でも「口が下手」だと分かっているのです。
私も一人で仕事をする時間が長いため、
意識的に人の多い所に出かけたりして
集団の中に身を置くように心がけています。
最近、母は定年退職をしましたので、
私は日本語ベラベラになるように接客業を勧めています。

東京は不思議な街です。
中央線沿線上などの商店街は、私の田舎よりもずっと田舎。
そこには年老いたお婆ちゃんも元気に店番をして働いています。
お漬物屋さん、八百屋さん、クリーニング屋さんなどの
個人商店の女性達は毎日色々な人と話しているので、
皆さん生き生きとしていらっしゃいます。
私の母にも色々な人と話しているうちに、
日本語ベラベラになるのではないかと期待しています。
接客業の再就職先が見付かるといいのですが、
なかなか地方では難しい様子です。
年老いた女性が綺麗な言葉で、
色々な世代の人や今まで会ったことのない業種の人とも
上手く話ができたら、綺麗。


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