杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第123回
無駄な時間は売れません

私は女性が図書館で本を読んでいる姿を見るのが好きです。
「ここにも、無駄な時間を過している人が居るなあ」
と思うだけで、嬉しくなってしまうのです。
年配の女性やお婆ちゃんが分厚い本をゆっくり見ているだけで、
その美しい姿に見とれます。
なんだか時間を味わっているように感じませんか。
文章の香りを味わうためには、多くの本を読まなければ
「香り」を感じることはないでしょう。
氷のように冷たい文章を書く人も居れば、
硬質な文章を書く人、
香水の香りのように気品漂う文章を書いている人も居ます。
その時々によって読みたい文章が違ったり、
ご贔屓の作家も出てきます。
この多くの無駄な時間が文章を読む喜びを
与えてくれると思うのです。

音楽でも同じことです。
よく、「ジャズが好きで好きで仕方がない」という方が
いらっしゃいますが、日常で音楽を聴いてはいません。
一枚のCDが一時間弱としても、千枚聴いたら千時間、
という無駄な時間が必要です。
これを職業にしようとしている人は
自分の好きな人のCDを一日8時間くらい
平気で聴いていたりなんかします。
しかも、色々な人を聴き比べているうちに
好きなミュージシャンに出会ったりします。
いきなり、雷で打たれたような感動をするというのは
珍しいことだと思います。
ここでも、全く無駄な時間が必要です。

一般の社会では無駄は削除しなくてはいけません。
家庭だって、無駄な物が溜まると窒息しそうです。
けれど、大切な無駄を味わうことができたら
時間の内容は変わります。
無駄な時間は不思議な香りが立ち込めています。
忙しくて仕方がなかった私がこの香りの虜になって
定期収入の道を捨ててしまいました。
今、自分のしたことに後悔はありません。
その無駄な時間がなければ、私はこうして書く機会を頂く
ということは有り得なかったから。
無駄な時間は売ることはできませんが、
自分で選んだ無駄な時間はきっと女性を幸福にします。


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