杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第145回
天職の人

私の知り合いに、靴の営業を天職にしている男性がいます。
彼は人の足裏を触って、「お客さん、腰痛ですね」
とぴたりと当てます。
彼に調整してもらった靴を履くと体調が良くなるのでしょう。
3万円以上もする靴が目の前でバンバン売れていきます。
彼のファンは地方にも沢山おり、
「彼に足を見て貰いたい」と地方営業を心待ちにしている方も
多いと聞いています。
その人はいつも接客で忙しいので、
昼食を食べる時間もままなりません。
それ程「貴方から靴を買いたい」と言うお客さんは多いのです。
一方、同じ店に立っている男性は暇そうです。
私も接客をしてもらったことが有りますが、
売れっ子おじさんとは「気合」が全く違うのです。
何だか適当に売っている感じがして、
「体に良い靴を買っているという実感」が薄れます。
売れっ子おじさんは、「もう、これで大丈夫!」
と自分の仕事に誇りを持って太鼓判を押してくれます。
そういう人から物を買うのは本当に気持ちがいいもんです。
その靴屋さんは、大手上場企業でもなく、
おじさんも社会的に偉い訳では有りません。
しかし、彼は人から求められているのです。しかも熱烈に。
彼を見て、天職を持った人というのは
こういう人のことを言うのだなと感じました。
人から求められている事に、
自分のベストを尽くして答え、喜んで貰っている人です。
私はついつい、自分に出来ることを中心に仕事を考えていました。
けれど、人から何を求められているのか、
ということも大切な要素なのです。

女性にとって就職難な時代です。
年齢を重ねて、尚且つ人に雇われようとしたら、
自分の条件など殆ど通らないでしょう。
けれど、私たち日本人の寿命は随分と伸びてしまいました。
何歳になっても働きたいと言う女性は多いのではないでしょうか。
その時に、先ほどの靴の営業のおじさんのように、
人から求められる事を探す、
見極めるというのも大切だと思いませんか。
私もこの原稿を書きながら、皆さんが読んで良かったと
感じていただけているのか自問自答中です。


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