杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第161回
タクシー運転手さんは聞いている

私はタクシーに乗ると
何故かタクシーの運転手さんと話し込んでしまいます。
私が話をする方よりも、どちらかと言うと
運転手さんがずっと話しており、
私は相槌を打っているだけということの方が多いのですが。
たまたま長距離で乗ることになってしまった時など、
「お客さんと話していたら楽しかったから、
460円まけてあげるよ」ということも有りました。
そのおじさんは、お客さんが乗りやすいように
どうやって工夫して車を止めているのかという話や、
「休みの日にレインボーブリッジにドライブに行くでしょ?
本当にね、夢の世界みたいなのね。
あなたも嫌なことがあったらあそこを車で飛ばしてみなさい。
きっと悩みなんか吹っ飛んじゃうよ」
と言うようなことも話していらっしゃいました。

最近乗ったタクシーの運転手さんの話です。
「50代位の女性が2人で乗るでしょ?
すごい怖い話しているよ。
亭主が定年になったら、もう覚えておきなさいよー、
懲らしめてやる、とか言ってるんだよ。
女の人は、浮気された時の苦しみを
何十年たっても覚えていて、忘れないんだねえ。
多分、女の人が男を許せないっていうのは、
浮気とギャンブルだね。
おっかチャンだけは大切にしないといけないねえ。
大切にした分、幸せにしてくれるんだろうね」
タクシーの運転手さんは、女性の裏の顔も知っています。
そして自分の奥さんと近所で花を買ってきて
2人で植えてる時や、
ラーメンを食べに横浜から福島までドライブに行く
という遊びが一番楽しい、という話をしていました。

真夜中のタクシー運転手さんたちは、
色々な人生を垣間見ながら仕事をしています。
どちらかと言うと人間の裏の部分を見ながら。
きっと誰もが昼間には見せない顔を、夜には見せる。
私達は、堪えきれない思いを夜に吐き出して、
何も無かったような振りをしながら昼を生きます。
でも問題はいつもちゃんと心の中にある
ということを知っている。
タクシーの運転手さんはそんな人達の裏の部分を見ながら
どんな人生が幸せなのかな、
なんて考えながら運転しているのかも。


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