第164回
踊るベンジャミン
私の部屋には観葉植物のベンジャミンがあります。
私の背丈と同じくらいの大きさ。
このベンジャミンが音楽に合わせて
踊っているとしか思えない程、成長します。
元々オフィスにあったものを一年前の冬に貰ったのです。
オフィスにあった頃は温度も一定で、
世間知らずのぬくぬくと安定した生活だったと思います。
それが、ある冬の夜に私の家にやって来た。
もうその頃からベンジャミンはネジが緩み始めました。
たった一日で実を付けたのです。
これは、ある冬の凍るような寒さに
生まれて初めて曝されたために、
「身を守らなければ」と子孫を作ったのです。
どうやら身の危険を察知した様。
そして無味乾燥のオフィスから
いつもナイトクラブ・夜中のバーのような私の部屋で
その才能?を開花させてしまいました。
きっと私は普通のリスナーさんより
大きな音で音楽を聴きます。
その音楽に合わせて踊るように急成長し始めたのです。
あまりの勢いに驚いた私は、
大きくならないように枝をちょきちょきと切りました。
これが、またベンジャミンの反骨精神を刺激したのか、
今までに無いものすごい勢いで葉っぱが増え始めました。
今やオフィスにいた頃の原型は全く無く、
枝は伸び放題、緑色は色鮮やかで生き生きしています。
ベンジャミンは「ご機嫌」に踊りまくっています。
お花の好きな女性には、
花に恋しているほのかな香りがあります。
私の部屋のベンジャミンも、
音楽に恋してしまったのでしょう。
いつも踊りまくっています。
女性はどうでしょうか。
年を重ねると心華やぐ体験が少なくなると言います。
恋する対象が花になっても、ベンジャミンになっても
その一瞬の生命の息吹を感じたのなら、
私達は幸せのお裾分けをして貰っていると思いませんか。
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