杉浦秀子さんが掘り起こしてくれる
日常に埋もれた美のヒント

第170回
80年以上ずっと美しい女性

日本橋高島屋の斜め前に
「えすぺろ」という老舗の喫茶店があります。
雑誌などで紹介されているので
ご存知の方も多いと思います。
ここのママさんが81歳の現在でも
元気に働いていらっしゃいます。
毎週火曜日と金曜日に出勤なさっているそうです。
綺麗に髪を整え、
着物を着、真っ白な割烹着を身に付けて働いています。
足袋を履き、美しい草履のその姿は
凛とした色気が漂っていらっしゃいます。
お話をされると、笑顔がとてもお上品で素敵。

先日、その「えすべろ」に行きました。
「雑誌を見て来ました」という私に
「どうもありがとうございます」
と深々とお辞儀をする女性に、
私は背筋がぴんと伸びました。
その瞬間に感じたのです。
年齢を重ねて美しいということは、
他人から大切にされるために、
自分を守ることでもあると。
私の前に立つ、やさしい笑みを浮かべた女性に
誰が暴言を吐くでしょうか。
お転婆な私も背筋が伸び、
丁寧な言葉を選び、
自分なりにお上品な振る舞いをしなくちゃ、
と緊張しました。
皆さんも見覚えがありませんか。
美しいご高齢の女性の前では、
なんだか自分までも
「おしとやか」な人間になってしまうのです。
何故だか、「大丈夫ですか」「お気をつけて」という
言葉を自然に掛けることも出来ます。

一緒に厨房を守っていらっしゃる女性にも別の日に
お話を伺いました。
そのお二人もとても美しい日本語でお話をされます。
そしてママのことを
「本当に可愛らしい方です。
コーヒーも一つ一つとても丁寧に作られるんです。
私もお婆ちゃまの様なコーヒーが入れられるように
努力しています」
と口を揃えてお話をされているのが印象に残りました。
一人の女性が美しいということが、
他の女性までも幸せにしてしまう。
これ程美しいことがあるでしょうか。


←前回記事へ 2004年1月29日(木) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ