第178回
遅咲きの花
上京してから公園が好きになりました。
田舎にいた時は、街そのものが
公園みたいなものなので、
特に緑を求めて出歩くということは
ありませんでした。
私の家の近くに浜離宮庭園があります。
この庭園を歩きながら
周りの高層ビルを眺めるのも好き。
何百年も前からある庭の木々の間を
ゆっくり歩きながら、
「昔の人と同じ風景をみてあるいているのだなあ」
などと感慨に耽っています。
その浜離宮に「竜舌蘭」という
50年に一度しか咲かない花が
昨年夏頃に咲いていました。
噂を聞きつけた私は、早速その花を見に行きました。
想像していた花は、色鮮やかな大輪の花。
けれど実際はその名の通り、
竜の様に背丈があり、
花は、「これは花なの?」という様な姿。
私はその大きな植物を前に色々な思いを馳せました。
「毎年、季節ごとに花の咲く時期を
指折りかぞえていたのかな。
一年、二年・・・五十年の今年!」
と半世紀を過ごしながらただそこに居る花。
私は自分と重ね合わせていました。
本当になりたかった職業にも就けず、
特別に際立った特技がある訳でもなく、
人が振り返るほどの美人であるはずもない自分。
でも、一年は確実に過ぎていってしまう。
「私にこの先、花の咲くことはあるのかな」
と思いながら過ごしていました。
大輪の花ではないけれど、
その個性ある花の竜舌蘭は
きちんと私の前で咲いていました。
「大丈夫。ちゃんとやって行ける。」
私は自分に暗示を掛けました。
皆さんも、自分の将来や今の状況に
不安になったりすることはありませんか。
そんな時は、暗示。
心の奥に届くように、そっと人知れず
暗示の魔法をかけてみてください。
きっと良い知らせが舞い込みます。
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