やがて本気で好きになります

第15回
いちばん売れたジャズのアルバム

一番売れたジャズのアルバムをご存知ですか?

答えは、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』。
1959年に録音され、2005年の現在までの46年間で、
200万枚近くの売り上げで、現在もロングセラーを続けています。

ポップスの売り上げと比較すると、
驚くに値しない数字かもしれませんが、
ジャズの世界では驚異的なセールスなのです。

もちろん、内容はお墨つき。
もはやジャズという括りを越えた、
一つの芸術作品といっても過言ではありません。

『カインド・オブ・ブルー』は、
私自身にとっても思い出深いアルバムです。

ジャズに入門したばかりの時期に私はこのアルバムを購入しました。
この頃の私にとってのジャズは、
正直言ってチンプンカンプンな「音」でしたが、
このアルバムだけは違いました。

聴いた瞬間から“世界”が理解出来たのです。

“理解”という言葉が正しいのかどうかは分かりませんが、
1曲目の《ソー・ホワット》の“ほの暗く静かに蒼い世界”に
すっかり魅了されてしまったのです。

“ジャズ本”を紐解くと、必ずこのアルバムについては、
“モード奏法が云々”といった記述がなされていますが、
このようなこと、最初から知る必要はありませんし、
知ったところで、
演奏の醸しだす独特な味わいが変わるわけでもありません。

細かい分析は、いくらでも出来ます。
しかし、『カインド・オブ・ブルー』で大事なことは、
マイルスが描こうとした音世界を感じることが
出来るか、出来ないか、
これに尽きるわけです。

星の数ほど出ているジャズですが、
このような雰囲気をたたえた演奏は唯一無二です。
後年のマイルスは、
このアルバムの曲を何度もライブで演奏していますが、
『カインド・オブ・ブルー』的な雰囲気を持った演奏は
二度としていません。
曲を通じて描きだそうとした“音風景”が違うのです。
むしろライブでは力強い演奏をしていますね。

1959年の春。
ニューヨークのスタジオにて、マイルスと、彼のサイドマンたちが、
奇跡的に描き出すことに成功した、音による“蒼い繪”。

躍動感に乏しいゆえに、
ジャズとしてはツマラナイという評論家もいますが、
ジャズとしてではなく、一つの芸術作品として、
是非、機会があればご観賞ください。

――――――――――――――――――――――――――――

『カインド・オブ・ブルー』
マイルス・デイヴィス

1.ソー・ホワット
2.フレディ・フリーローダー
3.ブルー・イン・グリーン
4.オール・ブルース
5.フラメンコ・スケッチ
6.フラメンコ・スケッチ(別テイク)


←前回記事へ

2005年9月23日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ