やがて本気で好きになります

第18回
「テーマ」とは?

前回は、ジャズは即興の音楽だということをお話しました。
しかし、すべてが即興演奏ではない、
というところで終わりましたよね。

フリージャズと呼ばれる前衛色の強いジャズは、
演奏のほとんどが即興で占められるものもあります。
しかし、今の段階では、
それは「特殊な例」だと思ってください。
一般的なスタイル、すなわち、
「モダンジャズ」と呼ばれているジャズは、
すべてが即興演奏ではないのです。

演奏は大きく二つの部分に分けることが出来ます。
「テーマ」と「アドリブ」です。

「テーマ」→「アドリブ」→「テーマ」

という流れで演奏されるのが一般的なスタイルです。

即興演奏は、「アドリブ」のところで行われます。
曲の最初と最後に演奏され、
「アドリブ」をサンドイッチのように挟んでいるパートが、
「テーマ」。
これは即興演奏ではありません。

では、「テーマ」とはなんでしょう?

一言で言ってしまえば、「原曲」のことです。

たとえば、《枯葉》という曲を演奏するとします。
最初は原曲を演奏します。もちろん、即興ではありません。
ジョセフ・コスマという人によって、
作曲されている既存の曲ですからね。

ここが「テーマ」です。

「テーマ」は、原曲のメロディをそのまま演奏する場合もあれば、
メロディを変形させたり、音と音の隙間に独自の旋律を挿入して、
自分なりの個性を出すこともあります。

しかし、基本的には《枯葉》という、
原曲のメロディを逸脱することなく、演奏が進行してゆきます。

先述したとおり、一般的なジャズの演奏においては、
素材となる曲を1回演奏した後に、
「アドリブ」が展開されるのがオーソドックスなスタイルなのです。

「テーマ」とは、
いわば即興演奏に取りかかる前の「助走」のようなものです。
まずは、多くの人が知っているメロディを演奏した後に、
いよいよ自分の個性を発揮する
即興演奏=アドリブに突入するのです。

「私はこれから、皆さんがよくご存知の《枯葉》という曲を、
誰もが聴いたこともないような演奏をしてみせましょう」
という宣言でもあります。

この助走であり、宣言でもある「テーマ」を終えて、
ジャズの醍醐味の即興演奏、
すなわち「アドリブ」に突入するわけですね。

「アドリブ」については、次回、解説したいと思います。

(つづく)

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『サムシン・エルス』

1.枯葉
2.ラヴ・フォー・セール
3.サムシン・エルス
4.ワン・フォー・ダディ・オー
5.ダンシング・イン・ザ・ダーク


この名演により、《枯葉》はジャズでもよく演奏されるようになった。
しんみりと「テーマ」を吹くマイルス・デイヴィス(tp)と、
自由奔放にアドリブを展開するキャノンボール・アダレイ(as)の対比が見事。

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2005年9月30日(金)

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