やがて本気で好きになります

第22回
「アドリブ」とは?(4)〜コード進行について 2

メロディが浮かび、それにふさわしいコードをつける。
これは、一般的な作曲の方法です。

ドリカムの吉田美和は、鼻歌でメロディを作り、
それをベースの中村正人がコードをつけて曲を完成させるそうです。

YMOの代表曲《ライディーン》も、
ドラムの高橋幸宏が作ったメロディに、
キーボードの坂本龍一がコードをつけて曲が完成しました。

このように、最初にメロディありきで、
メロディに合わせてコードがつけられるというのが、
作曲のオーソドックスなパターンです。

しかし、ジャズの場合は、この逆が多いのです。
最初にコード進行ありき。
このコード進行に合わせて即興でメロディを演奏するのです。

ティンパンアレイ系といわれるアメリカの古いポップスや、
ガーシュイン、あるいはコール・ポーターの曲には、
面白いコード進行の曲が多い。
だから、ジャズマンは、
これらの曲のコード進行“だけ”を拝借して、
メロディを即興で作ってしまうのです。

これは、特に、1940年代半ばにチャーリー・パーカー(as)や、
ディジー・ガレスピー(tp)らが中心となって推進した、
ビ・バップという、
当時としてはまったく新しいジャズの運動の基本的な発想ですが、
このビ・バップが発展したハード・バップも
このコンセプトを受け継いでいます。

面白いコード進行や、
複雑なコード進行にあわせて即興演奏をすることは、
ジャズマンの創作意欲を喚起しますし、
楽器奏者としてもひとつのチャレンジにもなります。

だから、スタンダードと呼ばれる、
昔から今まで演奏されつづけている曲は、
メロディの良さもさることながら、
コード進行が面白い曲も多いのです。

コード進行という枠組みの中から、どれだけ自分を表現できるのか。
これがジャズマンにとって
楽器を演奏する醍醐味のひとつなのですね。

この発想は、料理人に通じるところがあるかもしれません。

鯛という食材ひとつとっても、調理法はさまざまです。

刺身で素材を生かす料理人もいれば、
フランス料理のような
手の込んだ調理にトライする料理人もいるように、
ジャズの場合も、曲という素材は同じでも、
料理法はさまざまなのです。

原曲の持ち味を生かした料理をするジャズマンもいれば、
素材をバラバラに解体して、
もとの素材からは想像もつかないような料理をしてしまう
ジャズマンもいます。

このへんは、それぞれの演奏者の持ち味、センスです。
そして我々は、即興演奏を通してむき出しになる
彼らの癖、個性、人間性を好きになったり、
嫌いになったりするのです。

よって、“メロディが素敵”、
“曲がイイ曲”というような聴き方はもちろん否定しませんが、
それだけだとポップスの聴き方となんら変わりはありません。

ジャズの場合は、さらにもう一歩突っ込んで、
即興演奏を通じてあふれ出る演奏者の個性を味わい、
感動するべき音楽なのです。

ジャズは即興の音楽だと言われるゆえんは、
そこのところにあるのです。

――――――――――――――――――――――――――――

同じ《枯葉》という“食材”でも、料理人が違うだけで、こうも違う風景が出来上がってしまう。
この3つのまったく違ったタイプの《枯葉》を聴き比べてみるのも面白い。

マイルスのすすり泣くような
《枯葉》

1.Autumn Leaves
2.Love for Sale
3.Somethin' Else
4.One for Daddy-O
5.Dancing in the Dark
6.Alison's Uncle

摩天楼高く舞い上がる
ウイントンの《枯葉》

1.Caravan
2.April in Paris
3.Cherokee
4.Goodbye
5.New Orleans
6.Soon All Will Know
7.Foggy Day
8.Song Is You
9.Memories of You
10.In the Afterglow
11.Autumn Leaves
12.Cherokee

サラ・ヴォーンの《枯葉》は、
テーマのメロディが出てこない
迫力の歌唱

1.I Didn't Know What Time It Was
2.That's All
3.Autumn Leaves
4.Love Dance
5.The Island
6.Seasons
7.In Love In Vain
8.You Are Too Beautiful


←前回記事へ

2005年10月10日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ