やがて本気で好きになります

第32回
誰もが必殺技を持っている

もう少しレッド・ガーランド(p)を引き合いに出して
ジャズを語りましょう。

シングルトーンとブロックコードが彼の持ち味だということは
以前に解説しましたが、彼のアドリブの展開にも特徴があります。

前半はシングルトーン、
盛り上がってきた後半はブロックコードでアドリブを取る
という展開が彼の場合は多いのです。

だから、彼を嫌いな人からしてみると「またかよ」となります。
ワンパターンな展開、というわけです。

しかし、好きな人からしてみれば
「来たぞ!出たぞ!」と嬉しくてたまらない。
それほど、この“ワンパターンな展開”は、
彼を彼たらしめている強烈な個性でもあるのです。

スペシウム光線を出さないウルトラマンは
ウルトラマンではありません。

同様に、たとえワンパターンかもしれないが、
ジャズマンには
「その人を特徴づけるなにか」を持っているものです。

優れたジャズマンほど、強烈でユニークな個性を持っているし、
ファンも強烈な個性を聞きたいがために、
アルバムを買い、ライブに通うわけですから。

自由度が高い音楽なぶん、個性を出しやすいといえば出しやすい。
逆に、極端なことを言えばなにをやっても許される音楽ゆえ、
真面目で言われたとおりのことしか出来ない人にとっては
個性を出しにくい音楽がジャズといえるかもしれません。

たしかに
レッド・ガーランドが参加しているアルバムを何枚か聴けば、
「ワンパターン」な展開に聞こえます。

しかし、これは受け手の問題です。

水戸黄門が印籠を出すという展開を期待している人がいれば、
ワンパターンで展開が読めちゃうからツマラナイ
と感じる人もいるように…。

印籠が出るまでの展開、
印籠が出た後の話の収束を楽しみにしている視聴者が多いからこそ、
『水戸黄門』は長寿番組なのです。

同様に、個性の際立つジャズマンほど、
“水戸黄門の印籠度”が高くなることは
いたし方ないといえるでしょう。

ジャズマンの個性を聞き取れ、
それに対しての好き嫌いの判断が出来るようになってくれば、
それはジャズの鑑賞力が身についてきた証拠でもあるのです。

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『Red Garland at the Prelude』
Red Garland

1.Satin Doll
2.Perdido
3.There Will Never Be Another You
4.Bye Bye Blackbird
5.Let Me See
6.Prelude Blues
7.Just Squeeze Me (But Don't Tease Me)
8.One O'Clock Jump
9.Marie
10.Bohemian Blues
11.One O'Clock Jump [Alternate Take]
12.Foggy Day
13.Mr. Wonderful


演奏の展開は予想通りともいえるし、言葉を変えれば、期待を裏切らない演奏ともいえる。
しかし、分かっちゃいるけど興奮させてしまうピアノを弾くガーランドは大したもの。
彼のおいしい部分を集大成したライブ演奏をお聴きあれ。

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2005年11月2日(水)

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