やがて本気で好きになります

第35回
マクリーンの魅力

ピアニストに続き、今回は
オンリーワンな個性を持つサックス奏者を紹介したいと思います。

ジャッキー・マクリーン。
アルトサックス奏者です。

私は彼こそ、もっとも“ジャズっぽさ”を体現している
サックス奏者の一人だと思っています。

というのも、語弊があるかもしれませんが、
彼は「欠点を長所に変えている」ところが、
いかにも自由な音楽、ジャズらしいからです。

マクリーンのサックスの音程は怪しいことが多く、
微妙にぶら下がっている(正しい音程よりも低い)ことが多い。

また、彼のサックスの音色も、ダークでくすんでいます。

フレージングも流暢とはいいがたく、
どこか詰まった印象があり、
聴きようによっては消化不良の感じがしなくもありません。

以上は、マクリーンをマクリーンたらしめる立派な特徴です。

クラシックやブラスバンドなどの価値観からすれば、
「音程はもっと正確に。
フィンガリング(指使い)はもっと滑らかに。
音色ももっとキレイな音色を出すように練習しましょう」
ということになるでしょう。

しかし、ジャズ的な観点から見ると、
これらのマイナス要素がすべてプラスに逆転する可能性もあります。
もちろん、だからといって技術的に未熟なことは即、
優れたジャズ表現につながるとは限りませんよ。
あくまで、
楽器のコントロール不足のレベルを上回るだけの熱気や、
「オレはこれだけは言っておきたいんだ!」
という勢いがあれば、の話です。

そして、マクリーンのプレイには、それがあるのです。

ぶら下がった音程かもしれないけれども、
このような問題は瑣末だと思えるほど熱気の溢れる演奏、
つまったフレーズが逆に耳に残り、また聴きたくなる。

マニアの中にも
「マクリーンは音程が悪いから好きではない」という人がいますが、
私はこういう人は
ジャズのおいしいところを聴き逃しているんじゃないかな?
と思います。

はたして、ジャズに大切なのは正確な技術なのか、
それとも熱量なのか。
あなた自身も実際にマクリーンを聴いて考えてみてください。

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『スイング・スワング・スインギン
[Limited Edition]』
ジャッキー・マクリーン

1.ホワッツ・ニュー
2.レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス
3.ステーブルメイツ
4.アイ・リメンバー・ユー
5.アイ・ラヴ・ユー
6.アイル・テイク・ロマンス
7.116丁目レノックス街


ワンホーンで力強くスタンダードを力演するマクリーン。
この熱気、このガッツこそがジャズ! 
技術的な問題など、軽く吹き飛ばしています。

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2005年11月9日(水)

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