やがて本気で好きになります

第36回
レフト・アローン

前回紹介した、
ジャッキー・マクリーンの代表的名演を紹介したいと思います。

《レフト・アローン》という曲です。

角川映画の『キャバレー』では、
これでもか!というほどに使われていましたね。
たしかに、哀愁を帯びた旋律は、
演歌好きな日本人の琴線を刺激してやまないのだと思います。

この曲を、河原や夜の路上で吹いて、
カッコつけたいがために、サックスを始めた人を
私は何人か知っているぐらいですから(笑)。

ま、それぐらい、
多くの方が漠然と持っている“ジャズ”なイメージを
体現している曲なのかもしれませんね。

この哀愁たっぷりのメロディを、
訥々とマクリーンが吹くのですから、たまったものではありません。

この演奏は、彼の特質をあますことなく体現した名演です。

むせび泣くような、
すすり泣くような哀切極まりないサックスプレイ。
決して流暢なプレイではないのですが、
悲しみを堪えて、搾り出される音は、
こちらの涙腺を刺激してやまないのです。

ただし、
この曲が収録されている『レフト・アローン』というアルバムは、
マクリーンがリーダーではありません。
リーダーはマル・ウォルドロンというピアニスト。
彼は、最晩年のビリー・ホリデイのグループのピアニストでした。
《レフト・アローン》は、
ビリーが書いた歌詞に、ウォルドロンが曲をつけた曲なのです。
残念ながら、ビリーの歌唱は残っていません。

このアルバムは、ビリーの死後、
彼女の死を悼んだマルが吹き込んだものです。

そして、1曲目のタイトル曲が有名になったと同時に、
マクリーンのプレイも多くの人の耳を惹きつけました。

ただ、私からの提案ですが、
多くの人は、この1曲だけで満足してしまって、
ほかの曲をあまり聴いていないようなのです。
それは、あまりに勿体ないです。

もともとマル・ウォルドロンというピアニストは
地面に沈んでゆくかのような重くダークなピアノを弾く、
かなり個性的なピアニストです。

たとえば2曲目の《キャット・ウォーク》のように、
ほの暗く、小粋なナンバーや、
それこそ、先述したとおり、地盤沈下を起こしそうに重くて暗い
《エアジン》なんかにも耳を傾けて欲しいんですよね。

ハマる人は、かなりハマると思いますよ。

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『レフト・アローン』
マル・ウォルドロン・フィーチャリング・
ジャッキー・マクリーン

1.レフト・アローン
2.キャット・ウォーク
3.恋の味をご存知ないのね
4.マイナー・パルセーション
5.エアジン
6.ビリー・ホリデイを偲んで


1曲だけで有名になってしまうアルバムってたまにあるけれども、
これなんかまさに代表例。
タイトル曲以外の演奏も素晴らしいんですけどね…。

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2005年11月11日(金)

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