やがて本気で好きになります

第37回
テイク・ファイヴ

前回紹介した『レフト・アローン』のように、
1曲だけが有名になり、
他の曲は地味で目立たない存在に追いやられてしまっている
アルバムの紹介です。

デイヴ・ブルーベックの『タイム・アウト』。

3曲目の《テイク・ファイブ》は、
その昔、CMにも使用され、現在もいたるところで流れているので、
ご存知の方も多いと思います。

5拍子という難しいリズムなのですが、
そうとは感じさせないところがミソ。

《テイク・ファイブ》だけではなく、
このアルバムは、タイトルからも想像されるとおり、
変拍子で演奏されている曲集なのです。

我々に馴染みのある拍子というのは、
「1・2・3・4」の4拍子、
あるいは「1・2・3」の3拍子だと思います。

5拍子や9拍子の曲は、プログレならともかく、
ジャズではあまり一般的な拍子ではありません。

しかし、流麗なアルトサックスや、
巧みなドラミングを聴くかぎりでは、
複雑な拍子には感じられません。
決してノリにくい演奏ではないので、気軽に楽しめると思います。

ゴツゴツしたピアノと、
流麗なアルトサックスの対比も聴きどころの一つ。
アルトサックスは、ポール・デスモンドで、
軽やかでフワっとした音色が持ち味です。
対照的にブルーベックのピアノは幾何学的です。
この対極な音の個性がうまくぶつかり合うと、
オイシイ演奏が生まれるのです。

ポール・デスモンド作曲の《テイク・ファイブ》は、
5分前後の演奏。
「休憩を5分とろう」と、
「5拍子の曲をやろう」という二重の意味が込められています。

ブルーベックのピアノは、
ひたすら和音のパターンを反復するのみで、
ピアノソロはないのですが、
ジョー・モレロの難しいことを難しく感じさせずに叩くドラムソロは
傾聴に値します。

しかし、この曲だけではなく、
1曲目の《トルコ風ブルー・ロンド》にも
是非注目していただきたい。

変拍子で演奏される箇所は、リズムがつんのめるような感じがして、
なかなかスリルがあります。

曲の数箇所に、
4ビートのリラックスしたブルースが挿入されるのですが、
このリズムがチェンジした瞬間の緊張のほぐれ具合が、
気持ちよく、4ビートが流れている間は至福のひとときです。

慣れてくると、
《テイク・ファイブ》以上に聴きどころの多い曲だということが
分かることでしょう。

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『タイム・アウト』
ザ・デイヴ・ブルーベック・カルテット

1.トルコ風ブルー・ロンド
2.ストレンジ・メドウ・ラーク
3.テイク・ファイヴ
4.スリー・トゥ・ゲット・レディ
5.キャシーズ・ワルツ
6.エヴリバディーズ・ジャンピン
7.ピック・アップ・スティックス


デイヴ・ブルーベックと、ポール・デスモンドの対照的なプレイをする者同士が、
うまい具合に溶け合った名作。

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2005年11月14日(月)

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