やがて本気で好きになります

第38回
ありがとう!ミスター・サキソフォン・コロッサス!

11月6日の日曜日。
この日は特別の日でした。
ソニー・ロリンズのライブが国際フォーラムで行われたからです。

75歳を過ぎても現役で活動中のテナーサックスの巨人、
ソニー・ロリンズですが、
今回の来日公演が『ラストコンサート』なのです。

マネジャーも勤めてきた奥様の死去に伴い、
ツアー演奏活動にピリオドを打つ決意をしたロリンズ。
日本でロリンズの生の音を聴けるのは、
今回のツアーが最後になるのです。

会場には、年配のジャズファンがつめかけていて、
開演前から売店、喫煙所、ドリンクコーナーなどは大賑わい。
おそらく、年齢層的に、
彼らは学生時代にジャズ喫茶で
ジャズを聴いていた世代なんじゃないかと思います。

じつは、私は、
今回のツアーのメンバーにはちょっとした不満がありました。
今回に限らずですが、
いつも彼のメンバーの一員として参加している、
ベースのボブ・クランショウと、
トロンボーンのクリフトン・アンダーソンの2人です。

この2人は、長年ロリンズと連れ添っているだけに、
堅実に親分をサポートしますが、
その堅実さが逆に、閃きに欠ける、
判で押したようなプレイなんですね。

クリフトン・アンダーソンのトロンボーンは、
巧いんだけれども、なんだか華がない。

ボブ・クランショウのベースも、堅実だが、
教則本のようなプレイばかりで、面白みがない
(ウッドベースを弾いていた時代は凄かったんだけど)。

もっとも、堅実だからこそ、
ロリンズは長年彼らを雇い続けているんでしょうけれども、
結果的に、ジャズ特有のハプニング性や
インパクトが薄まっていることは否めません。

もっとも、
ロリンズのテナーだけを思う存分味わいたいという向きには、
決して親分のプレイの邪魔をしない彼らだから、
その点は安心なんですけれどね…。

女房と子供を連れた私は、
前から4番目の列のど真ん中の席に陣取り、
最後の最後まで、ロリンズ雄姿と、素晴らしい演奏を堪能しました。
彼の生の演奏姿を間近で見れば、
サイドマンの不満なぞ消し飛んでしまいます。

特に、最後に演奏してくれた
《セント・トーマス》には大感激でした。

過去に何度か、ロリンズのライブには行ったことがあるのでが、
トレードマークとでも言うべきこの曲を生で聴いたのは
今回が初めてだったのです。

そして、初めてだが、これが最後なのかと思うと、
嬉しい反面、悲しくもありました。

日本公演は最後でも、本国のほうでは長生きして、
いつまでもバリバリとテナーを吹きまくってくださいね。

ありがとう、ミスター・サキソフォン・コロッサス!!

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『ソニー・ロリンズ・イン・ジャパン』
ソニー・ロリンズ

1.ポワイ
2.セント・トーマス
3.アルフィー
4.モリタート


73年の来日時のライブ盤。このときは《セント・トーマス》が演奏されていますね。


『Without a Song:
The 9/11 Concert』
Sonny Rollins

1.Without a Song
2.Global Warming
3.Introductions
4.Nightingale Sang in Berkeley Square
5.Why Was I Born?
6.Where or When


ボストンでのライブを収録したロリンズの最新アルバム。
このライブの数日前には、あの忌まわしい9・11テロが…。
まさに“その瞬間”に、彼はNYの“現場”の近くにいたそうです。

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2005年11月16日(水)

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