やがて本気で好きになります

第40回
ピアノレストリオの快楽

前回は、ロリンズの
『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』のフォーマットが
ピアノレストリオゆえ、
馴染むのに時間がかかったという話をしました。

今回のテーマもピアノレストリオについてです。

学生時代の私は、ジャズ研究部に所属していました。
最初はピアノを弾いていたのですが、
部内で唯一のベーシストが退部してしまったために
ベースに転向しました。

私がベースを担当することになったため、
ピアニストがいなくなってしまいました。
だから、部内で組むバンドは
必然的に“ピアノレス”になってしまうのですね。

管楽器、ドラム、
私がベースという編成ばかりで演奏をしていたので、
聴くアルバムもピアノレストリオのものが多くなってきました。

ピアノレストリオは、ピアノが抜けた分、
それぞれの楽器の動きを追いかけやすい。
だから、最初は、自分のバンドの演奏の参考に
ピアノレストリオのアルバムを“お勉強”として聴いていましたが、
そのうち、観賞として聴いても楽しめるようになってきました。

“曲”として聴くよりも、
“演奏”、“その場の出来事”を聴くつもりで
ピアノレストリオに耳を傾けると、
非常に演奏が生々しく聴こえるのです。

ピアノやギターのようなコード楽器が抜けると、
どうしても安定感に欠けた演奏内容になりがちです。
そこを、ジャズマン3人が
知力と技の限りをつくした表現をするのです。

この演奏の生々しさを感じ取れてからは、
一気にピアノレスという編成に魅力を感じるようになりました。

先日の『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』はもとより、
オーネット・コールマンの『ゴールデンサークル』や、
リー・コニッツの『モーション』など、
数々の名盤を
手に汗握る興奮とともに聞ける体質に変化してきたのですね。

初心者が聴いて
一発で理解できるフォーマットではないかもれません。
しかし、
ピアノレストリオを楽しめるようになれれば、
あなたのジャズ度は「通」のレベルに達している
と判断しても良いでしょう。

次回は、この編成でおすすめのアルバムを紹介したいと思います。

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『Way Out West』
Sonny Rollins

1.I'm an Old Cowhand (From the Rio Grande)
2.I'm an Old Cowhand (From the Rio Grande) [Alternate Take]
3.Solitude
4.Come, Gone
5.Come, Gone [Alternate Take]
6.Wagon Wheels
7.There Is No Greater Love
8.Way Out West
9.Way Out West [Alternate Take]


当時としては珍しい試みだったピアノレストリオに、ソニー・ロリンズが挑戦した作品。
『ヴィレッジ・ヴァンガード』の興奮とは対極の、リラックスしたプレイが楽しめます。

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2005年11月21日(月)

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