第41回
ピアノレストリオの快楽2
前回、ピアノレストリオのお話しをしましたが、
私が愛聴しているピアノレストリオの名盤を3枚紹介すると同時に、
聴きどころも解説したいと思います。
まずは、リー・コニッツ(as)の『モーション』。
これは、熱い演奏です。
しかし、初心者の方には、
コニッツのプレイはなかなか入り込めないかもしれません。
そういうときは、是非、
エルヴィン・ジョーンズの奔放なドラミングに耳を傾けてください。
とくに《帰ってくれれば嬉しいわ》は、
ドラムだけでも聴けてしまうスリリングな演奏です。
次は、『ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンvol.1』。
オーネット・コールマン(as)は
フリージャズの人というレッテルが張られているために、
難解なジャズマンというイメージが強いですが、
全然そんなことはありません。
彼は徹頭徹尾メロディの人です。
内側から湧き出てくるメロディを、ストレートに表現します。
ただ、彼のメロディ感覚が、
当時の聴衆の価値観とはかけ離れた耳慣れぬものだったために、
難解(=前衛)な人というイメージがついてしまったのです。
彼が紡ぎだすメロディは、確かに奇妙かもしれませんが、
むしろ、他のジャズマンの奏でるメロディよりも、
むき出しで無防備で自由なフィーリングに溢れているのです。
そういうわけで、このアルバムでは、
徹底的にオーネットのサックスを耳で追いかけてみましょう。
また、是非、1曲目の元気なドラムにも注目してみてください。
3枚目は、
ブランフォード・マルサリス(ts)の『トリオ・ジー・ピー』。
このアルバムはベースを中心に追いかけてみてください。
ミルト・ヒントンという老練なベーシストの
年季の入った素晴らしいベースプレイを楽しめます。
曲によっては、弦を指板に叩きつけて音を出す
“スラップ奏法”(ロカビリーでよく使われる奏法)も楽しめます。
ベースの録音もクリアで、
ウッドベースはこんなにも表情の豊かな楽器だったんだということに
驚かれることと思います。
以上、ピアノレストリオのお薦め盤を3枚、
駆け足で紹介してみました。
ご興味をもたれた方は、是非、チャレンジしてみてください。
いずれも、ムード音楽やBGMにはなりにくい演奏で、
ながら聴きでは
ジャズマンの表現内容が頭に入ってこないと思います。
真剣に聴かざるを得ません。
よって、ピアノレストリオは、
“キチンと聴く”という習慣をつけるには、
もってこいのフォーマットだと思います。
案外、ピアノレストリオは「通」への近道かもしれませんね。
――――――――――――――――――――――――――――
『モーション』
リー・コニッツ |
1.アイ・リメンバー・ユー
2.オール・オブ・ミー
3.フーリン・マイセルフ
4.恋の味を御存知ないのね
5.帰ってくれればうれしいわ
6.アウト・オブ・ノーホエア
7.四月の思い出
8.イッツ・ユー・オア・ノー・ワン
|
なんといっても、エキサイティングなドラムが聴きもの。堅実にリズムキープをするベースにも注目!
スリリングな演奏と、単純素朴なメロディ。
まるで抽象画を観ているような、奇妙な心地よさに包まれることでしょう。
『Trio
Jeepy』
Branford Marsalis |
1.Housed From Edward
2.The Nearness Of You
3.Three Little Words
4.Makin' Whoopee
5.Ummg
6.Gutbucket Steepy
7.Doxy
8.Makin' Whoopee (Reprise)
9.Peace
10.Random Abstract (Tain's Rampage)
|
リーダーのブランフォード・マルサリスとは、孫の年ほども離れている老べーシスト、
ミルト・ヒントンの含蓄溢れるベースプレイは味わい深いです。
もちろん、モダンな感覚溢れるブランフォードのテナーも素晴らしい。 |