やがて本気で好きになります

第42回
アニー・ロスは歌う

せっかくですから、もう少しピアノレスのお話をさせてください。

ただし、今回はヴォーカルです。
アニー・ロスという歌手のお話です。

『アニー・ロスは歌う』という彼女を代表するアルバムがあります。
個人的に愛聴しているアルバムなのですが、
普通のヴォーカルのアルバムとはちょっとした違いがあります。

伴奏にはピアノもギターもいないのです。
つまり、ピアノレスです。

彼女の歌を伴奏するのは、ドラム、ベース、
バリトンサックスにトランペットの4人。
当時、アメリカの西海岸で人気だった
ジェリー・マリガン・カルテットが
アニー・ロスの歌の伴奏を務めているのです。

通常、歌の伴奏には、ギターやピアノといった
複数の音を同時に出せる楽器がつくものです。
和音を奏でる楽器がいないと、
音程が取り難く、歌いにくいですからね。

ところが、抜群の歌唱力を誇るアニー・ロスは、
そんなことはものともせずに、巧みな歌いっぷりをみせます。

ちょっとハスキーな歌声に、情感を込め過ぎない節回し。
さらにリズムのノリ方が抜群にうまい彼女には、
ピアノレスカルテット特有のスピード感ある演奏が似合うのです。

とくに、《スイングしなければ》が素晴らしい。

急速調のテンポに、切れ味鋭いアニーの歌唱。
ピアノやギターが抜けたぶん、サウンドは軽やかになり、
演奏にはスピード感が加わりますが、
まさに、この曲は、
ピアノレスというフォーマットの特性を活かすには
格好の歌素材なのです。

バリトンサックスの
ジェリー・マリジェリー・マリガンの活躍にも注目してください。
あるときは彼女に寄り添い、あるときは絡むように、
マリガンのソフトで流麗なバリトンサックスが
もう一つの旋律を奏で、
スムースかつスリリングに見事に歌をサポートしているのです。

バリトンサックスの低音に溶け合う彼女の歌声。
この二人の絡みはとてもセクシーです。

編成は「通」かもしれませんが、
『アニー・ロスは歌う』は、
初心者にも気軽に聴ける内容だと思います。
むしろ、ほかの“重たいジャズ・ヴォーカル”よりは
格段に聴きやすいアルバムなのかもしれません。

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『アニー・ロスは唄う!』
アニー・ロス

1.アイ・フィール・プリティ
2.ハウ・アバウト・ユー
3.あなたの顔に慣れてきた
4.今こそ夢のかなう時
5.レット・ゼア・ビー・ラヴ
6.オール・オブ・ユー
7.ギヴ・ミー・ザ・シンプル・ライフ
8.ジス・イズ・オールウェイズ
9.絶体絶命
10.スイングがなければ
11.ザ・レディズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー
12.マイ・オールド・フレイム
13.アイ・ゲス・アイル・ハフ・トゥ・チェンジ・マイ・プラン
14.ユー・ターンド・ザ・テーブルズ・オン・ミー
15.ジス・イズ・オールウェイズ(別テイク)
16.あなたの顔に慣れてきた(別テイク)


当時、アメリカ西海岸で人気を博したジェリー・マリガン・カルテットとがっぷり4つに組んだ、
アニー・ロスの代表作。

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2005年11月25日(金)

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