やがて本気で好きになります

第43回
チェット・ベイカー・シングズ

今回もヴォーカルの紹介です。
アニー・ロスのアルバムは、ちょっと「通」好みな内容でしたが、
今回は、入門者にも優しいアルバムを紹介しましょう。

『アニー・ロスは歌う』の伴奏にも参加していた、
チェット・ベイカーというトランペッターが
歌に挑戦したアルバムです。

『チェット・ベイカー・シングズ』。

有名なアルバムなので、ジャズファンではなくても、
お持ちの方は多いかもしれませんね。
特にジャズに興味の無い女性でも、
チェット・ベイカーのファンは多いですから。

さて、チェット・ベイカーのヴォーカルですが、
これはもう“脱力”の極地です。
いい具合に力が抜けていて、
頑張って歌っているという雰囲気は微塵も感じさせません。

当時の彼は、ジェームス・ディーンも顔負けなほどの美男子で、
そんな彼が、
中世的な声で甘く囁くように力の抜けた歌を歌うのですから、
多くの女性が虜になってしまったのは想像に難くありません。

逆に、真面目で硬派なジャズマニアからしてみれば、
「なんだこの力の抜けたヴォーカルは!」
となってしまうかもしれませんが…。

ちなみに、私は朝によく聴きます。

1曲目《ザッツ・オールド・フィーリング》の
出だしのソフトなトランペットと、
メリハリの利いた、
どこまでも“陽性”なラス・フリーマンのピアノ。

これを聴きながら、まだ覚醒しきっていないボーッとした頭で、
コーヒーを入れ、タバコに火をつけて、
軽やかで良い具合に力を抜けたサウンドに身を任せていれば、
次第に目が覚めてくるのです。

このアルバムの“湿気の含まないマッタリさ”は、
ゆっくりと胎動し始める静かな朝の空気にはピッタリです。

2曲目の《イッツ・オールウェイズ・ユー》が流れ始める頃は、
少しずつ覚醒しはじめた私の頭と、
静かな朝のスローな時間がゆっくりとシンクロしはじめて、
ちょっと贅沢で良い気分にひたることが出来ます。

もっとも、全体的にゆる〜い感じが心地よいアルバムなので、
また寝てしまうかもしれませんが(笑)。

まどろみと覚醒が心地よく共存する朝の空気に、
最適な雰囲気を提供してくれます。
と同時に、お洒落な雰囲気も漂っているアルバムなので、
特に女性の方におススメしたいアルバムです。
男性にとっては、彼女へのプレゼントに最適かも。

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『チェット・ベイカー・シングス』
チェット・ベイカー

1.ザット・オールド・フィーリング
2.イッツ・オールウェイズ・ユー
3.ライク・サムワン・イン・ラヴ
4.マイ・アイディアル
5.アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォア
6.マイ・バディ
7.バット・ノット・フォー・ミー
8.タイム・アフター・タイム
9.アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・
 ヴェリー・ウェル
10.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
11.ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー
12.ザ・スリル・イズ・ゴーン
13.アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥ・イージリー
14.ルック・フォー・ザ・シルヴァー・ライニング


この気だるく、アンニュイな声に魅せられたら、もう抜けられません。
このゆるさはクセになります。

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2005年11月28日(月)

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