やがて本気で好きになります

第45回
リー・モーガンの生涯

チェット・ベイカーに続き、
今回も、一人のトランペッターの生涯を追いかけてみます。

彼の名はリー・モーガン。

連載第1回目で「恋人に射殺されたトランペッター」の話を
チラッと出しましたが、それは彼のことです。

“ジャズロック”として有名なヒット曲
《サイドワインダー》で有名なトランペッターですね。

彼の粋でイナセなラッパは多くのリスナーの心をくすぐり、
同時に彼の生き方もジャズそのものでした。

14歳でトランペットをはじめた彼は、
1日8時間の練習を続け、
3年後には地元のフィラデルフィアでは名の知れる存在に。

ほどなくしてニューヨークに出たところ、
ブルーノートの社長、アルフレッド・ライオンの目にとまり、
18歳のときに、リーダー作を吹き込むまでになっています。

ライオンは、経営者と同時に熱烈なジャズファンだったので、
気に入ったジャズマンには採算を度外視して、
どんどん録音のチャンスを与える人でもあったのです。

ライオンは、短い間に何度も録音の機会を設けます。

リーダー作のみならず、
ブルーノートでレコーディングをする
様々なジャズマンのサイドマンとしても、
彼は数多くのセッションをこなしました。

日本でも沸き起こった「ファンキー・ブーム」の火付け役は、
アート・ブレイキーのジャズメッセンジャーズの
《モーニン》や《ブルースマーチ》などの演奏がキッカケでしたが、
モーガンは、この時期のメッセンジャーズのメンバーだった上に、
メンバーの一員として来日もしています。

彼のトランペットには、スイートな歌心に満ちています。
ハーフバルブという技を使って
音程を微妙にヒネる技を多用するなど、
色気のあるプレイをすると同時に、
聴き手の期待を裏切らない奔放なプレイが魅力です。

くわえて、彼はカッコいい。
少年のようにあどけないフェイス。
スマートな体躯に、細めのスーツをビシッと着こなし、
粋でトッポいラッパを吹きまくるので、
多くの女性の憧れの的でした。

サックス奏者ソニー・スティットの彼女を奪って結婚したり、
来日した際は
日本女性を片っ端から口説きまくったことでも有名な
色男でもありました。

一時期、ヘロイン中毒に陥っていた時期もありますが、
見事《サイドワインダー》をヒットさせ
起死回生の復活を遂げます。

常にトランペットをプレイすることにおいては真摯で、
前進することを忘れなかったリー・モーガン。

しかし、悲劇は、
72年のニューヨーク、雪の降りしきるマンハッタンで起きました。

『スラッグス』というジャズクラブに出演中だった彼は、
楽屋裏でヘレンという14歳年上の内縁の妻に射殺されてしまいます。

原因は女性をめぐる痴話喧嘩。

ヘレンの「私は銃を持っているのよ」に対し、
モーガンは「俺はタマを持っているぜ」。
そんな彼の態度が彼女を刺激し、押し問答になった末、
彼は撃たれてしまいます。
到着の遅れた救急車を待つ間もなく、彼は息を引き取っていました。

33年の短い生涯を駆け抜けたトランペッターの、
あまりにも劇的な最期でした。

音も生き様もジャズそのもの。
彼の人生そのものがジャズだったと言っても過言ではありません。

彼の遺した数々の音源には、
ジャズのカッコ良さ、粋さが封じ込められて、
今でも聴く者の心を揺さぶり続けています。

――――――――――――――――――――――――――――

『ザ・サイドワインダー』
リー・モーガン

1.ザ・サイドワインダー
2.トーテム・ポール
3.ゲイリーズ・ノートブック
4.ボーイ・ホワット・ア・ナイト
5.ホーカス・ポーカス


彼の代表作にして、ヒット曲《サイドワインダー》が目玉のアルバム。
この曲は、ジャズロックのはしりとして有名ですが、同じロック調の曲だったら、私は、


『ザ・ランプローラー』
リー・モーガン

1.ザ・ランプローラー
2.月の砂漠
3.エクリプソ
4.ザ・レディ


を推したいですね。タイトル曲はもとより、ジャズ化された《月の砂漠》が聞きものです。



『モーニン』
アート・ブレイキー
&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

1.モーニン
2.アー・ユー・リアル
3.アロング・ケイム・ベティ
4.ドラム・サンダー組曲
5.ブルース・マーチ
6.カム・レイン・オア・カム・シャイン


思いっきりファンキーでヒネりの効いたラッパを繰り広げる《モーニン》。
ジャズメッセンジャーのみならず、モダンジャズを代表する名盤中の名盤です。
また、彼はリーダー作だけではなく、
サイドマンとして参加したアルバムにもリーダーを喰うぐらいの、素晴らしいプレイをしています。
以下の名盤2枚がまさにその典型。
いずれも、テナーサックスがリーダーのアルバムですが、
リーダーのサックス奏者が、熱く吹きまくった後に登場するモーガンのラッパは、
たったの数音で、リーダーのプレイをかき消してしまうほどのインパクトを出すこともしばしばです。



『ブルー・トレイン』
ジョン・コルトレーン

1.ブルー・トレイン
2.モーメンツ・ノーティス
3.ロコモーション
4.アイム・オールド・ファッションド
5.レイジー・バード



『ディッピン』
ハンク・モブレー

1.ザ・ディップ
2.リカード・ボサ・ノヴァ
3.ザ・ブレイク・スルー
4.ザ・ヴァンプ
5.アイ・シー・ユア・フェイス・ビフォー・ミー
6.ボーリン


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2005年12月2日(金)

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