やがて本気で好きになります

第46
華麗なる歌姫、アン・リチャーズ

昔のビッグバンドには(今も?)、
バンドを彩る華やかな歌手が在籍していたものです。

たとえば、スタン・ケントン楽団。
このバンドは、40年代から50年代に人気を博したバンドです。
アート・ペッパーやリー・コニッツなど
一流のサックス奏者を輩出したことでも有名な楽団で、
実験的な演奏もあるにも関わらず、
大衆的な人気をも獲得していました。

美貌と実力を兼ね備えたシンガーも在籍していたことも、
人気の要因だったのでしょう。

この楽団は、
多くの美人女性歌手が在籍したことでも有名なのです。

たとえば、
アニタ・オデイ、クリス・コナー、ジューン・クリスティといった、
白人の美人歌手は皆、ケントン・ガールズです
(ケントン楽団出身の女性シンガーのことをこう呼びます)。

アン・リチャーズも、
ケントン・ガールズに名を連ねるシンガーの一人。

サンフランシスコで15歳からプロとして唄うようになった彼女は、
スタン・ケントンの熱烈なファンで、
彼のレコードのコレクターでもありました。

55年に、ある作曲家の紹介で、
晴れてケントン楽団へ入団した彼女ですが、
バンドの歌姫の座に収まるどころか、
1年後にはケントン夫人の座も射止めています。
いちファンが、憧れのバンドの歌手になり、
最後はバンドマスターと結婚してしまうという、
絵に描いたようなサクセスストーリーです。

しかし、ケントンとの結婚生活は、順風満帆ではなかったようで、
ケントンの奇行癖や、浮気性が原因で、
結婚生活は6年で破局を迎えてしまいます。

2度目の結婚もうまくいかず、精神状態も不安定に。
酒びたりの生活に陥った彼女は、
最後はピストル自殺という悲しい最期を迎えてしまいます。

悲しい末路を辿ってしまったアン・リチャーズですが、
全盛期の彼女の歌は輝いていました。

23歳のときに吹き込んだファーストアルバム
『アイム・シューティング・ハイ』は、
彼女の絶頂期を捉えたアルバムです。

躍動感溢れるオーケストラのアンサンブルは、
目もくらむほどの豪華絢爛さ。
このゴージャスな演奏と対等に張り合う
アン・リチャーズの自信に漲った勢い溢れる歌唱は、
聴く者を圧倒します。

ケントン・ガールズには、ハスキーな声の歌手が多いのですが、
アン・リチャーズは潤いのある艶やかな声と、抜群の声量を誇り、
他のケントン・ガールズとはちょっと違うタイプの歌手です。

大人の色気と、
はじけるようなパワーをも持ち合わせた彼女の歌唱は、
まさに快唱と呼ぶに相応しい歌いっぷりです。

興味を持った方は、
是非、彼女のスケールの大きな歌唱を楽しんでください。

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『アイム・シューティング・ハイ』
アン・リチャーズ

1.I’m Shooting High
2.Mornin’ Low
3.Nightingale
4.Blues In My Heart
5.I’ve Got To Pass Your House To
  Get To My House
6.Deep Night
7.Poor Little Rich Girl
8.Should I
9.I’m In The Market For You
10.Absence Makes The Heart Grow Fonder
11.Lullaby Of Broadway
12.Will You Still Be Mine


彼女を彩るゴージャスなアンサンブル。
迫力のサウンドに一歩も引けを取らずに、堂々とした彼女の歌いっぷりは、
日常のモヤモヤとした不安など、軽く吹き飛ばしてくれます。

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2005年12月5日(月)

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