やがて本気で好きになります

第49回
珈琲からビリー・ホリデイに魅せられたクリエイター

ビリー・ホリデイの世界に浸れるまでには
かなりの時間を要した私。
今でも、彼女を聴くときには、「よし、聴くぞ!」と、
心の中には、ちょっとした気合いのようなものが必要です。

しかし、中には、そのような気構えは全くなしで、
日常的にビリー・ホリデイを聴いている人もいます。
仕事で知り合った飲み友達です。

コーヒーが大好きだった彼は、高校の時から
家の近所のおいしい喫茶店に出入りするようになりました。
店の名前は「ビリー・ホリデイ」。

もちろん、
当時の彼はビリー・ホリデイには興味がなかったのですが、
おいしいコーヒーを出す店なのだから、
かかっている歌もイイに違いないと、
ビリー・ホリデイを聴いているうちに、
本当に好きになってしまったそうです。

今ではビリーの無い生活なんて考えられないほどだそうで、
仕事の合間や昼夜を問わず
ビリー・ホリデイを聴きまくる生活を続けています。

「でも、やっぱりビリーって夜のイメージが強いじゃないですか? 
昼間から聴くのって、ちょっとシンドくないですか?」
という私にも、全然そんなことは無いよと、涼しい顔。

朝も聴くし、もちろん夜だって聴く。
休日のティータイムにだって聴くし、
ビーチで寝そべって日焼けをするときもビリー・ホリデイ。
筋金入りです。

好きなアルバムは、「全部」。
優劣なんてつけられないんだそうです。

私が持つビリーのイメージは、夜でした。
しかし、彼と話しているうちに、
朝の時間帯にもビリー・ホリデイを聴いてみたくなってきました。

すると、意外と違和感が無いのです。
そのときかけたアルバムは、『アラバマに星落ちて』。

ご機嫌な1曲目《デイ・イン・デイ・アウト》。
心地よいテンポに乗り、
ピアノ、ギター、テナーがスムースにソロを交換してゆく。
非常にリラックスした雰囲気です。

原曲のメロディの崩しが絶妙で、
かつ歌詞の一語一語がするすると頭に入ってくる《霧深き日》。

軽快なハリー・エディソンのトランペットに、
抑制の効いた大人の味わいを感じさせるベン・ウェブスター。
粋なギターを奏でるバーニー・ケッセル。

もちろん、
シチュエーション的には照明を落とした飲み屋が相応しいのですが、
陽光降り注ぐ、まぶしい朝にコーヒーを飲みながら耳を傾けるのも
悪くないと思いました。

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『アラバマに星落ちて』
ビリー・ホリデイ

1.デイ・イン・デイ・アウト
2.霧深き日
3.アラバマに星落ちて
4.ワン・フォー・マイ・ベイビー
5.ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングズ
6.時さえ忘れて


朝にくつろぎながらビリーを聴くのも悪くはない、と思わせる1枚。

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2005年12月12日(月)

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