やがて本気で好きになります

第57回
ジャズのブルースについて

前回
アルフレッド・ライオンのブルース好きについて触れたので、
今回はブルースについて触れたいと思います。

とはいえ、「そもそもブルースとは〜」などと書き始めると、
いくら紙数を費やしてもキリがない上に、
ひとくちにブルースといっても様々な種類があるので、
なるべく簡潔に、要点を解説するよう、頑張ってみます。

誤解を恐れず、乱暴な言い方をすると、
ブルースは黒人が生み出した、
俳句のようなものだと思ってください。

つまり、一定の形式、ルールに則って行われる自己表現の手段です。

俳句のルールは、
五・七・五という文字数の縛りと季語を入れることですが、
ブルースの縛りは、1コーラスが12小節だということと、
あらかじめ決まっているコード進行です。

12小節の枠組みと、
決まったコード進行の流れに沿って奏でられる(歌われる)のが
ブルースです。

もちろん、俳句に字余りがあるように、
ブルースにも12小節の枠組みにとらわれないものや、
コードが変則的なものもあります。

また、「ヤツの生き方は常にブルースを感じるぜ」とか、
「ブルーハーツの歌はすべてブルースだ」 (メンバーの発言)
といった、
“気分”や“ニュアンス”の意味で使われることもありますが、
このようなことは言い出したらキリがないので、
ここでは触れず、
あくまで“形式、音楽のシステム”としてのブルースに
焦点を絞りたいと思います。

たった12小節の中に、
様々な表現が可能な、奥の深い世界、ブルース。
枠組みが決まっているがゆえに、
逆に表現者の個性が浮き彫りになりやすいのは、俳句と同じですね。

一般にブルースのコード進行は、
スリーコード(3つのコード)が基本で成り立っていますが、
モダンジャズのブルースのコード進行は、
もっと複雑、細分化されているものが多いです。

たとえば、ロバート・ジョンソンやB.B.キングら
生粋のブルースマンの演奏するブルースとは
響きも雰囲気もかなり異なります。

ライオンがジャズマンに要求したブルースは、
もちろん、前者のほうのブルースで、モダンな響きに満ちた、
いわゆる“ジャズのブルース”なのです。

では、モダンな響きのブルースとは?
こればかりは、文字数を費やして解説するよりも、
実際にジャズの素晴らしいブルースの演奏に接して、
耳で、肌で理解したほうが早いでしょう。

次回は、ジャズにおける名ブルースの紹介をしたいと思います。

おっと、そういえば、この連載もこれが今年で最後ですね。
読者の皆様、良いお年をお迎えください。
そして、来年も『ダテから入ってツウになれ』を
引き続き宜しくお願いいたします。

(高野 雲)

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『The Complete Recordings』
Robert Johnson
DISC:1
1.Kindhearted Woman Blues
2.Kindhearted Woman Blues [Alternate Take]
3.I Believe I'll Dust My Broom
4.Sweet Home Chicago
5.Rambling on My Mind
6.Rambling on My Mind [Alternate Take]
7.When You Got a Good Friend
8.When You Got a Good Friend [Alternate Take]
9.Come on in My Kitchen
10.Come on in My Kitchen [Alternate Take]
11.Terraplane Blues
12.Phonograph Blues
13.Phonograph Blues [Alternate Take]
14.32-20 Blues
15.They're Red Hot
16.Dead Shrimp Blues
17.Cross Road Blues
18.Cross Road Blues [Alternate Take]
19.Walking Blues
20.Last Fair Deal Gone Down
DISC:2
1.Preaching Blues (Up Jumped the Devil)
2.If I Had Possession Over Judgment Day
3.Stones in My Passway
4.I'm a Steady Rollin' Man
5.From Four Till Late
6.Hellhound on My Trail
7.Little Queen of Spades
8.Little Queen of Spades [Alternate Take]
9.Malted Milk
10.Drunken Hearted Man
11.Drunken Hearted Man [Alternate Take]
12.Me and the Devil Blues
13.Me and the Devil Blues [Alternate Take]
14.Stop Breakin' Down Blues
15.Stop Breakin' Down Blues [Alternate Take]
16.Traveling Riverside Blues
17.Honeymoon Blues
18.Love in Vain
19.Love in Vain [Alternate Take]
20.Milkcow's Calf Blues
21.Milkcow's Calf Blues [Alternate Take]

悪魔に魂を売ってギターのテクニックを手に入れたと言われた伝説のブルースマン、
ロバート・ジョンソンの全曲集。
喜び、悲しみ、怒り、絶望…。
ブルースとは、さまざまな感情表現が可能な、
シンプルながら奥深いフォーマットだということが分かるでしょう。
深夜に聴くと染みてきます。

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2005年12月30日(金)

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