やがて本気で好きになります

第63回
ロックでいえばビートルズ?
チャーリー・パーカーの音楽

「パーカー聴かずしてモダンジャズを語るなかれ」

昔から通のあいだではよく語られている言葉ですが、
これはある意味真理だと思います。

いうまでもなく、チャーリー・パーカーは、
その後のジャズに、大きな影響を与えたジャズマンです。

いや、この表現は生ぬるいかな。
もっと単刀直入な言い方をすると、彼が吹いた内容を、
他のジャズマンが、一時期、みーんなマネをしていました(※)。

それほど、彼のプレイは、同業者からしてみれば、
マネをしたくなるほど、素晴らしく魅力的だったのです。

初期のジャッキー・マクリーンや
ルー・ドナルドソンらの演奏を聴けば、
パーカーからの影響が一聴瞭然。

音色が違うため、気づきにくいかもしれませんが、
ピアノのバド・パウエルや、
ベースのポール・チェンバースのアドリブの中にも、
パーカーフレーズが出てくるほどですから、
その影響力の強さは計り知れません。

かつて、レニー・トリスターノ(p)が言いました。
「彼はジャズミュージシャン全員を訴えることが出来る」

チャールズ・ミンガス(b) も、
《ガン・スリンギン・バード》という曲を書きました。
意味はこうです。
“もしバード(パーカー)がガンマンだったら、
他の連中も憧れてガンマンになるだろうけれども、
彼らのことごとくがパーカーの前では死体の山になるだろうよ。”

彼の影響力の凄さの一端が見えてくることと思います。

一時期puffy(パフィ)という
2人組の女性ユニットが流行りましたが、
若いファンはもとより、オジサン連中も夢中になりました。

それは、プロデューサーの奥田民生が、
ビートルズの印象的なフレーズを
意図的に曲の中にたくさん盛り込んだからです。
ビートルズという“原典”を知っているオジサン連中が
世代の違う彼女らの音楽に慣れ親めた理由はここにあります。

つまり、パーカーという原典を知ってしまえば、
それを孫引き、ひ孫引きしているジャズに慣れ親しむのは
容易なのです。

くわえて、パーカーはフレーズのみならず、
ものすごいスピード感と気持ちの良い音色の持ち主でした。

音符、速度、音色の3要素が、録音から半世紀以上過ぎた今でも、
我々の五感を刺激するのです。

あるジャズマンが、
駆け出しの頃、先輩ジャズマンにこう言われたそうです。
「君が、単なるジャズファンならば、
パーカーを聴かなくても良いだろう。
しかし、仕事としてジャズをやってゆく以上は、
好き嫌いはさておいて、パーカーは聴いておかねばならない。」

では、僭越ながら、私からもアドバイスを。

いきなりパーカーを聴いてもジャズの敷居が高くなるだけ。
しかし、ある程度(具体的には30枚ぐらい)ジャズを聴いたら、
是非、チャーリー・パーカーにチャレンジしてみてください。
いままで分からなかったジャズの表現が
一気に氷解するかもしれないし、
パーカー本人の虜になるかもしれません。
そして、より豊かなジャズ生活を
パーカーの音楽は保障してくれるでしょう。

※もちろん例外のジャズマンもいます。
 パーカーの影響を受け、
 彼の表現をもとに自己のスタイルを築き上げたジャズメンを
 「パーカー派」といいます。

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好きなミュージシャンの演奏を聴いてパーカーの音楽の輪郭をつかむのも、
上手なパーカーへの近づき方かもしれません。
以下、様々なジャズマンが演奏したパーカーの音源です。


『Bud Plays Bird』
Bud Powell

1.Big Foot (Long Version)
2.Shaw 'Nuff
3.Buzzy
4.Yardbird Suite
5.Relaxin' At Camarillo
6.Confirmation
7.Billie's Bounce
8.Ko Ko
9.Barbados
10.Dewey Square
11.Moose The Mooch
12.Ornithology
13.Scrapple From The Apple
14.Salt Peanuts
15.Big Foot (Short Version)


バド・パウエルが弾くパーカーナンバー。ダークで乾いたタッチが魅力です。



『スティット・プレイズ・バード』
ソニー・スティット

1.ナウズ・ザ・タイム
2.マイ・リトル・スエード・シューズ
3.パーカーズ・ムード
4.コンステレーション
5.オウ・プリヴァーヴ
6.フーティ・ブルース
7.コンファーメイション
8.コ・コ
9.ヤードバード組曲
10.スクラップル・フロム・ジ・アップル
11.オーニソロジー


パーカー在命中は、パーカーとよく間違われたというソニー・スティットによるパーカー。




『Looking at Bird』
Archie Shepp
1.Moose the Mooche
2.Embraceable You
3.Ornithology
4.Billie's Bounce
5.Yardbird Suite
6.Blues for Alice
7.How Deep Is the Ocean?
8.Confirmation

テナーサックスと、ベースのデュオというシンプルな編成ゆえ、
パーカーの音楽の骨格が浮き彫りになります。

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2006年1月13日(金)

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